yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

ラ・ラ・ランド (2016・米)

    ハリウッドで女優を目指すミア(エマ・ストーン)はオーディションに落ちて意気消沈した帰り道、偶然入ったバーで演奏されたピアノに心救われる。演奏していたのは古典的なジャズバーを開くことを夢見るピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)だった。しかしその時クビを宣告されていたセブは、声を掛けてきたミアを無視して店を出て行ってしまう。最悪の出会いをした2人だったが、その後も偶然に出会ったことからやがて恋に落ち、互いに励まし合いながらそれぞれの夢に向かって進んでいく関係になっていく。しかしセブが生活の為に旧友キース(ジョン・レジェンド)のバンドに参加したことから2人のすれ違いが始まってしまい…。監督、脚本:デイミアン・チャゼル、撮影:リヌス・サンドグレン、音楽:ジャスティン・ハーウィッツ、振付師:マンディ・ムーア、衣装デザイン:メアリー・ゾフレス。

 

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    まずオープニングが圧巻で、いきなり歌い踊り出すミュージカルのある意味バカらしい部分を無効化してしまうほど壮大過ぎる映像で、現代にミュージカル映画という形式を見せる為の仕掛けとして十分以上の作品への導入だった。

 

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    物語はかなりベタ。出会い、すれ違い、離れた彼女を迎えに行く、みたいな流れは出来の悪い少女漫画みたいだし、2人が強力なソウルメイトとなって行く過程もよく分からない。しかしそんな感情の機微をミュージカルシーンでぶっ飛ばして物語を繋げられると、面倒な恋愛過程はどうでもよくなってくるし、そこでのエマ・ストーンがとにかく可愛いから別にいいかな、と思えた。エマ・ストーンは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』からずっと可愛いのに段々ケバくなっているのが気になっていたけど余計な心配だった。特にクライマックスのジャズバーでのダンスは最高で、ずっと見ていたかった。
   

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    ライアン・ゴズリング演じる相手役のセブの、マイルスやモンクを敬愛しつつ今のジャズは全く認めていないキャラクターはジャズがジャンルとして没落してしまった要因を作ったファンの類型で、どんなジャンルのファンにもいる面倒臭いやつとしか思えないし、彼と対照的に伝統を踏まえつつ新しい音楽をやろうとするキースが微妙に筋の通っていない男という描かれ方をされているところからも作り手側の音楽観には納得いかない部分も多い。とはいえミュージカルシーンの楽曲そのものは高揚感溢れる素晴らしいもので、作り手の音楽観が映画自体の価値を下げているとは思わなかった。

 

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    そんなベタな物語と微妙なキャラクターでありながらも全篇に施されたヴィヴィッドな色遣いの鮮やかさとミュージカルシーンでの気持ち良く繋がっていく映像が映画全体を高揚感とともに推進していて、デイミアン・チャゼルがアカデミー監督賞を獲得したのも納得。ロマンチックでエロチックなグリフィス天文台のシーンなどハリウッドの名所探訪映画としても楽しかった。

 

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    そして何より感動的だったのはアートに身を捧げた表現者たちが「普通」の生活を投げ捨て、狂気すらも身に纏って創造への道を突き進む姿で、そんな人々に支えられ、作られてきた映画そのものをクライマックスにおいて〈あり得たかも知れない現実〉を夢想させる装置として見せ付けられた時、その表現者への熱い賛歌と「作り物」への愛情表現に様々な感情が押し寄せてきて涙が溢れてきた。それは作り手や芸術作品への感謝の気持ちや自身の凡庸な生活を省みることや、色んな感情のないまぜになったもので、映画を観る醍醐味を味わえた。最後のエマ・ストーンのセレブ姿はコントのコスプレ感が半端無かったけどね。

 

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「ラ・ラ・ランド」本予告 - YouTube

 

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花澤香菜 / Opportunity

    最高です。既出シングルの3曲はどれも良かったものの、北川勝利、山崎ゆかり、秦基博それぞれの個性が色濃く出た楽曲だったので、これらがひとつのアルバムに入ってくるイメージは浮かびにくかったけど、結果としてそれらも溶け込んでトータルとしての完成度を感じさせる傑作ポップアルバムになっていた。これは人選含めたプロデューサーの仕事と歌い手としての花澤香菜の存在感が大きいのかな。各曲のクオリティの高さは素晴らしい人選もあるのだけど、曲の良さはもちろん隅々まで神経の行き届いたアレンジが施されていたりして、やっつけ仕事感皆無なのが嬉しいところ。片寄明人曲『FLOWER MARKET』では演奏しているのがオリジナルラインナップのGreat3+アイゴンで感激だったけど、楽曲もフジファブリックの人の鍵盤が入ってちょっとStereolab調になっていて、これが花澤さんの声と相性抜群、今後の方向性の指標にもなりそうな名曲だった。

 

花澤香菜 『ざらざら』(Music Clip Short Ver.) - YouTube

花澤香菜 『あたらしいうた』(Music Clip Short Ver.) - YouTube

花澤香菜 『透明な女の子』(Music Clip Short Ver.) - YouTube

花澤香菜 「Opportunity」(セルフレビュー) - YouTube

 

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発売  2017/2/22

収録楽曲

1.スウィンギング・ガール
2.あたらしいうた
3.FRIENDS FOREVER
4.星結ぶとき
5.滞空時間
6.カレイドスコープ
7.透明な女の子
8.Marmalade Jam
9.Opportunity
10.ざらざら
11.雲に歌えば
12.FLOWER MARKET
13.brilliant
14.Seasons always change
15.Blue Water

 

POLYSICS / Replay!

     ベスト盤、しかも再録によるものなど普通のバンドだったら全く興味か湧かないアイテムだが、ポリは例外だった。オリジナル収録時とバンドのラインナップが変わってたりすることもあるが、全ての曲が怒涛のライブの積み重ねによってビルドアップされ続けているので再構築された楽曲としての完成度が高く、通常の新譜と変わらぬ新鮮さも同時に楽しめた。しかもポリ流ファンクな新曲『Tune Up!』がメチャクチャ良くて、バキバキの演奏に久々にどポップなメロディーが乗ってくる名曲だった。

 

POLYSICS 『Tune Up!』 - YouTube

 

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曲目(初回生産限定盤)
ディスク: 1
1:Tune Up!
2:シーラカンス イズ アンドロイド 2017
3:Young OH! OH! 2017
4:Shout Aloud! 2017
5:URGE ON!! 2017
6:Electric Surfin’ Go Go 2017
7:Digital Coffee 2017 Rocket 2017
8:カジャカジャグー 2017
9:MEGA OVER DRIVE (Live at Shinjuku ReNY 2016/10/13)
10:Let’s ダバダバ (Live at Shinjuku ReNY 2016/10/13)
11:Buggie Technica (Live at Shinjuku ReNY 2016/10/13)

ディスク: 2 (DVD)
1:Tune Up! (COUNTDOWN JAPAN 16/17)
2:シーラカンス イズ アンドロイド (Now is the live!)
3:Young OH! OH! (BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14)
4:Shout Aloud! (BUDOKAN OR DIE!!!! 2010.3.14)
5:URGE ON!! (DVDVPVDVLIVE!!)
6:Electric Surfin’ Go Go (Now is the live!)
7:Digital Coffee (We ate the show!!)
8:Rocket (We ate the show!!) カジャカジャグー (ハヤシiMovie Edit)
9:MEGA OVER DRIVE (What’s This???)
10:Let’s ダバダバ (MEMORIAL LIVE OR DIE!!! 祝1000本&15周年!!! 2012.03.03/04)
11:Buggie Technica (LIVE AT newwave)

発売:2017/2/22

アラビアの女王 愛と宿命の日々 (2015・米、モロッコ)

     イギリス鉄鋼王の令嬢でオックスフォード大学を首席で卒業したガートルード・ベル(ニコール・キッドマン)は20世紀初頭の英国人女性としての型に収まることを嫌い、単身、激動のアラビアへと渡る。そこで三等書記官ヘンリー・カドガン(ジェームズ・フランコ)や英国領事リチャード・ダウティ=ワイリー(ダミアン・ルイス)らとの恋、T.E.ロレンスロバート・パティンソン)などとの出会いを経験しつつ、アラビア各国を踏破し、英国人ながら中東の社会と自然とに溶け込んでいくのだった…。監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク、撮影:ペーター・ツァイトリンガー、音楽:クラウス・バデルト

 

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    歴史大作風の外観ながら予想通りそこはあんまり興味無さげで、中東の圧倒的な自然の造形を(多分)ドローンなんかも援用してヘルツォークが嬉々として撮影した風景と、それに溶け込んだニコール・キッドマンジェームズ・フランコの古典的な美男美女ぶりを楽しく堪能するというエレガントな映画だった。

 

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    自然描写の美しさ、特に俯瞰から迫っていく渓谷の描写など今の撮影技術だからこそ出来る映像は圧巻だったけど、だからこそ重装備の撮影機材で命懸けとしか思えない秘境探検を捉えて虚構の中にリアルなスリルが充ち満ちていたかつての作品群の狂気はあまり感じられなかった。その代わりというか古典的な美男美女として立ち振る舞わせたニコール・キッドマンジェームズ・フランコが役柄に相応しい立ち姿を見せてくれて、優美な風景映画としてのノスタルジックな味わいも感じさせてくれた。特にジェームズ・フランコが普通にしてたらこれほど真っ当な二枚目になるというのはけっこう意外だった。

 

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「アラビアの女王 愛と宿命の日々」予告 - YouTube

 

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ドクター・ストレンジ (2016・米)

    天才ながら傲慢な神経外科医、スティーブン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は交通事故で両手を痛め、医師としての技術を失う。あらゆる治療法を試みるも失敗し、同僚で元恋人のクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)の慰めにも耳を貸さず落ちぶれていくストレンジだったが、偶然耳にした奇跡的な治療行為を行うカトマンズの寺院、カマー・タージを訪れることで、魔術の力に目覚め、新たなヒーロー、ドクター・ストレンジとして覚醒する。しかしそれは指導者エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)、兄弟子モルド(キウェテル・イジョフォー)らとともに、カエシリウスマッツ・ミケルセン)たち闇の勢力との魔術戦争に身を投じることでもあった…。

監督、脚本:スコット・デリクソン、脚本:ジョン・スペイツ、C・ロバート・カーギル、製作ケヴィン・ファイギ、撮影:ベン・デイヴィス、プロダクション・デザイン:チャールズ・ウッド、視覚効果監修:ステファン・セレッティ、音楽:マイケル・ジアッキーノ。

 

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    シュールレアリズム絵画の中でアクションを繰り広げるているような映像表現が気持ち良くて、CGによる世界の作り込みも行き着くところまで来たと感じた。そしてそんな中で坊主頭のティルダ・スウィントンとカンバーバッチ、マッツ・ミケルセンが真剣に中二的マンガバトルをやってくれるというのが楽し過ぎて感動した。そのバトルの舞台であるミラー次元というのが一体どういう設定なんだとか、よく考えると実はよく分からなかったりするのだが、楽しいし、気持ちいいから別に良し、という感覚で観られた。

 

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    加えてアメコミ映画として必須であるキャラクターの魅力もバッチリで、メインキャラクター以外でも同僚のダメ医者(マイケル・スタール・バーグ)やストレンジをカマー・タージに導くことになるパンクボーン(ベンジャミン・ブラット)などなど、皆いい味出していた。

 

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     なのでストーリーは不要なぐらいだが、そこに関してもラストの解決策含めて色々捻ってあって楽しかったし、ヒーローがスーパーパワーを発動するまでの過程、手段で対立軸が生まれるというのもヒーロー物としてまた一味違ったテーマを出してきた感じがして楽しめた。ドクター・ストレンジの体験する精神世界もとことん悪夢的で、勧善懲悪のエンターテイメントと作り手の趣味嗜好がほどよくブレンドされた作品だと思った。

 

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映画『ドクター・ストレンジ』日本版予告編2 - YouTube

 

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ヒッチコック/トリュフォー (2015・米、仏)

    「定本 映画術 ヒッチコックトリュフォー」を題材に、1962年当時のヒッチコックトリュフォーのやり取りを録音した音声テープや、スコセッシ、フィンチャー黒沢清ら現代の監督たちが本とヒッチコックについて語ったインタビューなどを織り交ぜながら著作の内容に迫る。監督、脚本:ケント・ジョーンズ、脚本:セルジュ・トゥビアナ、日本語字幕:山田宏一

 

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    これぞまさに〈まさかの映画化〉とも言えるけど、映画化のアプローチは原作へのイントロダクションというような形で、特に斬新な内容が出てくる訳ではない。

 

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    しかし「俳優は家畜だ」などの有名な発言を音声で確認出来たり、有名監督が影響を語るなどその意味では充分だと思ったし、楽しかった。ちなみに語っている監督たちはウェス・アンダーソンオリヴィエ・アサイヤス、ピーター・ボグダノゥィッチ、アルノー・デプレシャンデヴィッド・フィンチャージェームズ・グレイ黒沢清リチャード・リンクレイターポール・シュレイダーマーティン・スコセッシ、といった面々。なぜにデ・パルマが呼ばれていないのかが気になって仕方なかったが、断ったのかな。

 

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ヒッチコックの肉声『ヒッチコック/トリュフォー』特別映像 - YouTube

 

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沈黙 (2016・米)

    江戸初期、若きポルトガル人宣教師、ロドリゴアンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は日本で棄教したとされる恩師フェレイラ(リーアム・ニーソン)を見つけ出して真相を確かめる為、キリシタン弾圧下の長崎へと向かう。マカオで出会ったキチジロー(窪塚洋介)という日本人を案内役にようやく長崎へ潜入したロドリゴたちをイチゾウ(笈田ヨシ)やモキチ(塚本晋也)たち潜伏キリシタンが迎い入れる。しかし彼らは井上筑後守イッセー尾形)の徹底したキリシタン狩りの脅威にさらされていた…。
監督、脚本:マーティン・スコセッシ、脚本:ジェイ・コックス、原作:遠藤周作、撮影:ロドリゴ・プリエト、プロダクションデザイン、コスチューム:ダンテ・フェレッティ。

 

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    異郷探検と人探しの物語としての面白さもあるし、単純に信仰が素晴らしいという映画でもなかった。スコセッシはカトリックを否定しているわけではもちろんないと思うけど、団体としての宗教や国家という形式ではなく、あくまで個々人の信念そのものを善悪を超越して描いていて、その姿勢はこれまでの社会からはみ出したタクシードライバーやヤクザ者、金融屋の描き方と一貫していた。

 

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    今作を見てカルトだろうと何だろうと信じることが素晴らしいと勘違いする人が出てきそうなのは怖いが、カトリックを伝道する若者2人を若さゆえの盲信を感じさせるアンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーに演じさせていることからも団体への忠誠を危うさ込みで描いていることが窺えたし、それは国家と密着している当時の日本仏教の描き方とも共通していた。最終的に神を見出すのが、国家や宗教団体などの組織から外れてしまった者というところもスコセッシらしい。

 

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    あと凄かったのは暴力描写とそれを受ける日本の役者陣で、ふんどし一丁で本気の水責め受ける塚本晋也が中でも鬼気迫っていた(それをやらせるスコセッシも怖いが)。観ていて本気で辛くなる場面になっていて、役者としての塚本晋也、凄まじかった。初期の自作ではちょっとナルシズム入った2枚目だったのに、ここまでやるのかと思った。あとイッセー尾形井上筑後守はキャラ作りすぎてる気もしたけど、見てたら段々慣れたかな。出ずっぱりの窪塚洋介はもちろん、加瀬亮浅野忠信も良かった。

 

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    全体として日本人が欧州からの目線で記した日本の見聞録を米国人が台湾で撮影して映画にしている複雑な成り立ちながら、驚くほど原作に忠実で、時代劇としても違和感を感じなかった。さらには要所で映画的見せ場を用意してダレさせず飽きさせない作りで、スコセッシの安定しつつも若々しく新鮮で冴えた演出を堪能出来る見応のある作品だった。

 

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映画『沈黙-サイレンス-』本予告 - YouTube

 

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