突然変異により異能力を備えたミュータントたちの殆どが死滅した2029年。不滅の細胞を持つはずのミュータントでウルヴァリンとして長年活躍してきたローガン(ヒュー・ジャックマン)は衰えた身となり、アメリカとメキシコの国境沿いでリムジンの運転手に身をやつしていた。そんなローガンの元にガブリエラ(エリザベス・ロドリゲス)という女性が現れ、ミュータントの少女ローラ(ダフネ・キーン)をノースダコタまで送り届けて欲しいと懇願する。頼みを断るローガンだったがローラを追う組織の男ドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)らの襲撃を受けた際、ローラがローガンと同じ能力を持つことを知る。ローガンは匿っていた老いと認知症に蝕まれたかつてのミュータントの指導者、プロフェッサーX=チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)とともに、ローラを安全な地まで送り届ける旅を始めるのだった。
監督、脚本:ジェームズ・マンゴールド、脚本:スコット・フランク、マイケル・グリーン、撮影:ジョン・マシソン、プロダクションデザイナー:フランソワ・オデュイ、編集:マイケル・マカスカー、ダーク・ウェスターヴェルト、音楽:マルコ・ベルトラミ。
楽しかった。老眼のローガン(やはり言ってみたくなる)とボケ気味のプロフェッサーXの老々介護漫才を見られるのは長らく作品に付き合ってきた身としてはやはり物凄く楽しい。しかしあまりにも落ちぶれたプロフェッサーXの姿を素直に楽しめるのは番外編、アナザーストーリーという割り切りがあればこそというのもあって、これがX-MEN第一世代(ファーストジェネレーションじゃないよ。ややこしい)の正式な終着点だとするとチョット待って〜という気持ちにはなってしまう。
まあ、フューチャー&パストでX-MEN世界はパラレルワールドが無数にある何でもありの無敵設定を手に入れているので、どんな話を語っても誰を殺してもやり直し可能という状態ではあるんだけど。なのでウルヴァリンの暴力装置ぶりを存分に描いたり、若き日のヒュー・ジャックマンを再現してみせたり、さすらい人で孤高のローガンがミュータントの少女に出会うという第1作のプロットをなぞるような物語の始まりにヒュー・ジャックマン版ウルヴァリンへの敬意を感じられたりと、ラスト作品として相応しい映画になっていたから良かったのは間違いない。
ただし、これを持ってパトリック・スチュワートまでプロフェッサーX引退を決めたとか言っているので、その点はちょっと納得出来ない。まあ一回転生(?)してるし、本来『ファースト・ジェネレーション』で世代交代したはずだったのだから、未だにやってくれてたことに感謝すべきかな。しかし引退なら『チャールス』で一本映画作って欲しかったよ。
メキシコ国境からカナダ国境へ至るロードムービーという現代アメリカの状況を踏まえたプロットや、アクションというよりバイオレンス映画という方がしっくりくる作品のトーンは今迄のX-MEN映画とはかけ離れた別個の作品のようにも見えるが、しかしこれまでのX-MENワールドの諸々からボンヤリと浮かび上がる作品世界のバックグラウンドやキャラクターの関係性があってこその映画になっていたので、子供向けコスプレ映画を否定した侍映画のように思わせておいて実はX-MENリテラシーがないと十分に堪能出来ないという、ちゃんとシリーズファンを裏切らない作りになっていた。ただその暴力性で人々の断絶を表現する為に殺さなくていい脇のキャラクターを殺してるイヤな感じはあったりしたけど。
あと、ローラ役のダフネ・キーンのアクションや表情がカッコよくて良かったし、初登場から15年以上経ても肉体を維持して、しかも演技派的立ち位置も獲得しているのに未だに懸命にヒーローを演じてくれているヒュー・ジャックマンやパトリック・スチュワートの困った老人ぶりも当然良かった。それと今作のバイオレンスたっぷりにウルヴァリンとプロフェッサーXの老齢ぶりを描いたのは、もう第1世代は終わりなんだよ!卒業しなさい!という愛のムチなのかも知れんな、とも思ったりした。
映画「LOGAN/ローガン」予告F - YouTube