yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

ブラックパンサー (2018・米)

    アフリカの超科学文明国ワカンダは、その力の源である謎の鉱石「ヴィブラニウム」の悪用を防ぐためにその力を秘匿し、国王は代々「ブラックパンサー」として王国を守護してきたが、武器商人ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と謎の男エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)がワカンダの秘密に迫っていた。若き国王ティ・チャラ/ブラックパンサーチャドウィック・ボーズマン)は妹で天才科学者のシュリ(レティーシャ・ライト)、ティ・チャラの元恋人でスパイのナキア(ルピタ・ニョンゴ)、親衛隊長オコエダナイ・グリラ)、CIAのロス(マーティン・フリーマン)らの協力を得ながら王国を守るために動き始める。

監督、脚本:ライアン・クーグラー、脚本:ジョー・ロバート・コール、製作:ケヴィン・ファイギ、撮影監督:レイチェル・モリソン、プロダクションデザイン:ハンナ・ビークラー、衣装デザイナー:ルース・カーター、視覚効果監修:ジェフリー・バウマン、音楽:ルドヴィグ・ゴランソン。

 

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   CGを多用したアクションの白々しさは目立ったが荒唐無稽過ぎるワカンダ王国の設定上で現実の社会問題をベースにした多層的な脚本を成立さるマーベルの力技が今回も炸裂していたし、今作では遂に妹萌え要素まで取り込んでいて流石だった。

 

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    一番肝心なアクション面で不満の残る作品ながらマーベル作品としてのクオリティを確保していたのは、敵役のキルモンガーが持たざる者側の不満を体現した説得力のあるキャラクターになっていて魅力的だったことが大きい。その分ブラックパンサー自体は金持ちで生まれながらの高貴な身分というなかなか共感しづらいキャラクターだったけど、一度王位から落として自力で復権させてみたりと、何とか共感出来るように工夫はされていたと思う。とは言え貧富の差など社会問題を扱いながらも富と知識の独占体制に君臨している王様が主人公というのはちょっと厳しい。金持ちで嫌な奴だけど愛すべきキャラクターのトニー・スタークはやはり偉大だ。

 

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映画『ブラックパンサー』日本版予告編2 - YouTube

 

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パシフィック・リム アップライジング (2018・米)

   異世界から出現したKAIJUを人類が巨大ロボット、イェーガーによって撃退して10年。放浪生活をしていた英雄ペントコストの息子ジェイク(ジョン・ボイエガ)は、両親の仇を討つ為に自作のイェーガーであるスクラッパーを駆っていた少女アマーラ(ケイリー・スピーニー)との出会いなどを経て、義姉のマコ(菊地凛子)が局長を務める環太平洋防衛軍に復帰する。一方、巨大商社シャオ産業は社長リーウェン・シャオ(ジン・ティエン)指揮の元、ニュートン博士(チャーリー・デイ)を中心に無人イェーガーを開発し、環太平洋防衛軍での採用を求めた会議を開催するが、その会場を所属不明の漆黒のイェーガー、オブシディアン・フューリーが襲撃する。ジェイクはアマーラや同僚のネイサン(スコット・イーストウッド)、ハーマン博士(バーン・ゴーマン)、そして訓練生のリョーイチ(新田真剣佑)たちとともに新たに現れた謎の敵に立ち向かう。

監督・脚本:スティーヴン・S・デナイト、脚本:エミリー・カーマイケル、キーラ・スライダー、T.S.ノーリン、キャラクター原案:トラヴィス・ビーチャム、製作:ギレルモ・デル・トロ、撮影:ダン・ミンデル、プロダクション・デザイナー:シュテファン・デシャント、編集:ザック・ステーンバーグ、ディラン・ハイスミス、ジョシュ・シェファー、衣装:リズ・ウォルフ、音楽:ローン・バルフェ、視覚効果スーパーバイザー:ピーター・チャン

 

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    ある程度役者が続投しているだけで演出も画面の質感も前作を踏襲しておらず全くの別物だったのは予想通りだが、より大味になってB級感増した昔ながらのパート2感で弛緩したジャンル映画としては楽しめた。ホントは時空の歪みで菊地凛子に成長せずに前作で幼少時代のマコ役をやってた芦田愛菜がそのまま成長したマコになって活躍する話を見たかったけど、そうはならなかったな。

 

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    しかし脚本は『エヴァンゲリオン』や『パトレイバー』初期OVAから劇場版辺りまでが確実に参照されているのに全くその旨味が活かされていないというのは逆に凄い。アマーラのキャラクターはどう考えで泉野明だし、漆黒のイェーガーはグリフォンまるパクリの上に使徒まで被せてきていたが、多分監督はそこら辺に興味がないのか、そこら辺を活かすことなく大雑把に流して済ませていて、これがちゃんとデル・トロでやってたら再び盛り上がるオタク映画になってたかもと思うと残念な気もする。特撮映画とかロボット物と考えずに前作とは別物の『トランスフォーマー』みたいなハリウッドCGアクション映画として享受するぶんには期待もしてなかったので別にいいかな、とは思ったが。

 

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    しかし中国企業の社長(ジン・ティエン)の心底どうでもいいキャラクター造形といい、役者の大根ぶりといい(この人、キングコングでもいかにもとってつけたよな役で出ていた)出資者におもねった匂いをぷんぷんと漂わせるのは萎えるのでやめて欲しい。やるにしてももっとスマートなやり方があるだろうに。新田真剣佑も印象が薄いし、役者自体は作品の質と演出で随分変わっちゃうのでジン・ティエンだって使われ方によっては多分もっとマシなんだろうけど。

 

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『パシフィック・リム:アップライジング』日本版本予告 - YouTube

 

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ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 (2017・米)

    ベトナム戦争が泥沼化していたニクソン政権下の1971年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」が元軍事アナリスト、ダニエル・エルズバーグ(マシュー・リス)の手により流出、NYタイムズ紙がスクープする。一方、ライバル紙のワシントン・ポスト紙は亡き夫に代わり社主となったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)が招聘した編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)や部下のベン・バグディキアン(ボブ・オデンカーク)らが文書の入手に奔走するが、キャサリンは旧知の国防長官マクナマラブルース・グリーンウッド)から文書の公開を中止するように警告を受けていた。

監督、製作:スティーヴン・スピルバーグ、脚本:リズ・ハンナ&ジョシュ・シンガー、撮影監督:ヤヌス・カミンスキー、プロダクションデザイン:リック・カーター、編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー、衣装:アン・ロス、音楽:ジョン・ウィリアムズ

 

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    冒頭の機密文書流出のシークエンスでのサスペンス演出からハイレベルで、文書公開に至るキャラクターたちの熱い思いや決断を盛り上げるエンターテイメントぶりも流石だったし、シーンそれぞれが楽しくて、例えば記者のベンがコインを入れて電話を掛けるシーンなど笑っちゃうぐらいに焦燥感が演出されていて凄く良かった。

 

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    編集主幹の奥さん(サラ・ポールソン)の描き方も、映画の内容に対して古色蒼然としているのは時代設定的に仕方ないのかな、と思っているとちゃんと報道の自由、知る権利というテーマから性の平等へとテーマを拡げていく伏線になっていたりして、脚本も秀逸だった。

 

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    報道が政治家に忖度せず使命を全うすべしという今の日本にジャスト過ぎるメッセージの熱さが感動的なのはもちろん、娯楽作品としても非常に痛快で、やっぱりスピルバーグ凄いな、と当たり前のことを改めて思い知らされた。

 

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『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』予告編 - YouTube

 

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レディ・プレイヤー1 (2018・米)

    2045年、荒廃した街に暮らす大多数の人々はVR世界「OASIS」での理想の人生を心の拠り所にして暮らしていた。その「OASIS」をオグデン・モロー(サイモン・ペグ)とともに創造したハリデー(マーク・ライランス)が「OASIS」に隠した3つの鍵を手にした者に「OASIS」の権利を譲るという遺言を残して死去。VR世界は謎を解明するガンターたちによる激しい争奪戦の舞台となった。現実世界では集合住宅に暮らす孤独な青年ウェイド(タイ・シェリダン)もパーシヴァルというアバターとなってそれに参加、有名プレイヤーのアルテミス(オリビア・クック)と出会い、エイチ(リナ・ウェイス)やショウ(フィリップ・チャオ)、ダイトウ(森崎ウィン)ら「OASIS」内の仲間とともに謎の解明に迫る。しかし巨大企業IOI社のソレント(ベン・メンデルゾーン)も強大な資力で遺産を狙っており、ウェイドたちを追う。さらにソレントは現実世界でも武闘派のフナーレ(ハナ・ジョン=カーメン)を使ってウェイドたちに迫り…。

監督・製作:スティーブン・スピルバーグ、脚本:ザック・ペン、原作・脚本:アーネスト・クライン、撮影:ヤヌス・カミンスキー、美術:アダム・ストックハウゼン、編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー、衣装:カシア・ワリッカ=メイモン、音楽:アラン・シルベストリ。

 

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   オタクカルチャーが題材なだけに色々細かな不満は出るけど、とにかくイベントとしてお腹いっぱい、ご馳走さまでしたとしか言いようがない映画だった。端々に本編とは関係ないキャラクターをチョイ見せさせたり、よく観ないと気づかない、一度見では分からない仕掛けがふんだんに盛り込まれていて、それを見つけてニヤリとさせて、分かる、分かるよと満足させてオタクを気持ち良くさせる構造に見事に絡め取られて喜んでしまったよ(とは言え主人公たちが現実世界でもちゃんと美男美女だという時点でオタクに迎合してない気もするが…)。

 

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   散々仮想世界を面白楽しく描いた挙句に現実が(ある程度)大事ですと結論づける物語は説得力皆無だし、そんなメッセージや物語を全て放棄してお祭り要素だけ詰め込んでくれたら最高だったとは思うが、そんなものには制作費も投入されないだろうし、そうなると今作が見せてくれた素晴らしい映像の数々も見られなかった訳で、現時点で大作映画としてやれるギリギリの着地点でオタクを喜ばせる最大限の見せ場を用意してくれたスピルバーグはやはり偉大。

 

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    金田バイクやガンダムメカゴジラをハリウッドのリアルなCGで、しかもスピルバーグが見せてくれたというだけで感激ものだが、欲を言えばもっと溜めを使ってゆっくり見せて欲しいとは思った。特にメカゴジラは特撮的所作で動かして欲しかったよ。これじゃマイケル・ベイトランスフォーマーじゃんと思ったが、あれも一応スピルバーグ製作総指揮だから、スピルバーグのロボット観はデル・トロとは違ってやはりアメリカンなんだろうな。とは言えスピルバーグはオタクというより骨の髄までの映画好きということが『シャイニング』完コピでヒシヒシと伝わってきて、ホントにやりたかったのはこっちなんだろうな、というのも感じた。

 

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READY PLAYER ONE - Official Trailer 1 [HD] - YouTube

 

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ヴァレリアン 千の惑星の救世主 (2017・仏)

    西暦2740年。  プレイボーイで腕利きの連邦政府エージェント、ヴァレリアン(デイン・デハーン)は彼が恋する同僚のローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)とともに”千の惑星都市”と呼ばれるアルファ宇宙ステーションを訪れ、フィリット司令官(クライヴ・オーウェン)の命によりステーションの危機を救うべく極秘ミッションを開始する。しかしそこには権力者の陰謀や歴史から抹殺された惑星の秘密が隠されていて…。

監督、脚本:リュック・ベッソン、原作:ピエール・クリスタン、ジャン=クロード・メジエール、製作:ヴィルジニー・ベッソン=シラ、コンセプト・デザイン:パトリス・ガルシア、ベン・マウロ、マーク・シモネッティ、ジュー・フェン、シルベイン・デプレ、アラン・ブリオン、VFXスーパーバイザー:スコット・ストクダイク、VFXプロデューサー:ソフィー・ルクレール、音楽:アレクサンドル・デスプラ、撮影:ティエリー・アルボガスト、衣装:オリヴィエ・ベリオ、美術:ユーグ・ティサンディエ、編集:ジュリアン・デイ。

 

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   リュック・ベッソンがまたやってくれた(やってしまった)。資金を集めるセンスは凄いがSF的なセンスは皆無、それでもこんな大作を心配になってしまうレベルの珍品としてやり遂げてしまう姿に愛おしさを感じなくもないので、嫌な気持ちにはならなかったけど、有象無象の脇キャラクターに対する取り扱いの雑さ、マイノリティへの無自覚な思慮の欠如が甚だしいままに大きな愛を謳う幼稚さはやっぱり酷かった。

 

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   キャストの顔ぶれは豪華でカメオ出演的にハービー・ハンコック(国防長官)やルドガー・ハウアー(世界連邦大統領)が出ていたり、客引きのチンピラ(?)がイーサン・ホークだったりした。しかしメインキャラクターのクライヴ・オーウェンも含めてどの役も別にその俳優じゃなくていいんじゃないか、という程度で非常に無駄遣い感が強かった。特に不定形のエイリアン役で登場したリアーナは賑やかし以外の何物でもなく、退場のさせられ方にも唖然とさせられた。カーラ・デルヴィーニュは可愛かったけど。

 

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   あと画面に関してはバンド・デシネをCGを駆使して実写化するとクリアな色合いが薄っぺらで安っぽく出来上がる悪しき伝統が続いているけど、今作に関してもそこは踏襲している感じで、やっぱりSF映画にはセンスが重要だと改めて思い知らされた。

 

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映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』予告編|3.30全国公開 - YouTube

 

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おはなしして子ちゃん(講談社文庫) / 藤野可織

    表題作、舞台となる小学校の雰囲気や生徒の感情のリアリティが凄くて、やっぱり藤野可織凄い!となる。その他の短編も物語の形はそれぞれ全く違いつつもアイデアに溢れ、恐怖とユーモアの混在した短編になっていて、非常に楽しかった。諸星大二郎と少女マンガを足してライトノベルにしたものを圧縮したみたいな『ピエタとトランジ』も良かった。

 

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淵の王(新潮文庫) / 舞城王太郎

   分類としてはホラーみたいだし、日常に立ち現れる狂気と怪異の恐怖をちゃんと感じさせてもくれたけど、同時にキャラクターが基本的にネアカで、特に語り手の背後霊たち(?)の前向きな姿勢が陰惨な展開にも軽やかさを感じさせ、明るく楽しい娯楽作品のように楽しめる独特の感覚があって、新鮮だった。

 

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