yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

書籍

世にも不思議な物語 世界の怪奇実話&都市伝説 (扶桑社ミステリー)/ レノア・ブレッソン著・尾之上浩司訳

実話の再現ドラマという触れ込みのテレビ版をノベライズしたものとはいえ、どの作品も良質な幻想小説として面白く、それを実話を紹介する体で並べているのがいい味になっていた。年代も現代から随分離れているので、ホントにあった怖い話を求める人には物足…

中世社会の基層をさぐる (山川出版社)/勝俣鎭夫

前方に未来を見るという現代の認識が中世のある時期から始まったものであり、それまでは前方に過去が拡がっていたという精神構造のシフトに関する一章のSF的な思考や、中世までは家そのものに人格を見て社会が動いていたという民俗学を援用した諸星大二郎的…

映画の奈落: 北陸代理戦争事件(国書刊行会) / 伊藤彰彦

深作欣二監督、高田宏治脚本、松方弘樹主演による1977年の東映映画、『北陸代理戦争』の制作過程を追ったドキュメンタリー。後追いで映画に触れた身としては同じ深作映画とはいえ、鮮烈な北国の風景が印象的過ぎで「仁義なき〜」と比較して観てはなかったの…

恐怖(文藝春秋)/ 筒井 康隆

ここ最近以外の筒井作品は、ほぼ読んでいると思っていたが、これは読んでなかった。というかこれ、筒井康隆が老人になって書いたイメージで、わりと近頃の作品な気がしてたが2004年刊行だから既に15年以上前の作品か。ヤバいな。ドタバタやりつつ主人公が段…

安達としまむら10 (電撃文庫)/ 入間 人間

作者が言ってる通り、殆どがエピローグ的な内容なんだけど、どれも秀逸すぎる。安達が家を出るエピソードの母娘の距離感の描き方とか凄い。他のエピソードでも主人公2人以外の関係性は相変わらず予定調和に収束させず、ただあるがままに冷徹に見据えながら、…

ある映画の物語(草思社)/フランソワ・トリュフォー著・山田宏一訳

いくら作家主義を標榜していようが、映画づくりは集団作業によって進行し、その作用でフィルムが決定付けられることを改めて教えてくれるドキュメントとして面白かった(今だとスマホで一人で作る選択肢もあるが)。フェリーニ作品のように映画監督の孤独と…

アムネジア(角川書店)/稲生 平太郎

犯罪に巻き込まれ、闇社会に入り込んでいくスリリングな物語として楽しんでいると全く別次元の世界に入っていき、デビッド・リンチ的な展開を楽しめた。作中人物が物語自体を語るメタ小説のようでもあり、純粋に超常的な物語の展開するオカルトSFとしても読…

リュシエンヌに薔薇を (世界の短篇シリーズ・早川書房)/ローラン・トポール著・榊原晃三訳

どれも諧謔性に満ちた悪夢の断片のイメージから構築されたような掌編で、オチのない短い夢をそのまま書き起こしたようなものも多数。なので単体では薄味なものも多かったが、作品の根底に一貫して流れている世界への不信が度を過ぎていて、まとめて読むとか…

一度きりの大泉の話(河出書房新社)/ 萩尾望都

竹宮惠子との訣別などシビアな内容も含まれていたが、上品さと素っ頓狂な可愛らしさの中にクリエイターとしての我の強さが垣間見える語り口調の文体に萩尾望都の漫画世界と同様のムードが感じられて心地良く読めた。本人は大泉時代をトキワ荘になぞらえられ…

殺人鬼〈2〉―逆襲篇 (新潮文庫) / 綾辻 行人

シチュエーションを変え、殺戮方法を一層エスカレートさせてバージョンアップ、前作同様ミステリ的な仕掛けもあるのでスプラッター映画の続編にありがちなマンネリと恐怖への慣れを感じる事なく読んだ。しかし、より過剰さの増した暴力描写は当時の時代状況…

殺人鬼 (新潮文庫) / 綾辻 行人

作者も自身が非暴力的で気弱な人間であることをあとがきでことさら強調するほど暴力的で残虐なスプラッター小説だが、綿密な人体破壊描写はマニアックなスプラッター映画に感じる作り手の新しい表現、見せ方を提示してやろうという懸命な情熱と同種の清々し…

蜜蜂と遠雷(幻冬社) / 恩田 陸

ピアノに燃えていた娘に読ませようと思って買っていたものの(未だに燃えてる)、先に映画版を観たのもあって長らく積んでいたが、ようやく読んだ。で、やっぱり恩田陸は面白かった。ピアノコンクールを舞台にして、バトルマンガさながらに、初回より2回目、…

ブラック・ユーモア選集〈1〉幻の下宿人(早川書房)/ローラン・トポール著、榊原晃三訳

久々に読書しながらヤバい、ヤバいよ〜と興奮。ローラン・トポールが誰なのか分かってなかったが、表題作の『幻の下宿人』を読んでいて、なんか知ってる話だと思ったらポランスキーの『テナント』の原作だった。というかトポールはヘルツォークの『ノスフェ…

ワシントン・スクエアの謎 (論創海外ミステリ)/ ハリー・スティーヴン・キーラー 著、井伊順彦 訳

貰っていたので前情報皆無で読み始めたら偶然が偶然を(無理矢理)呼ぶ御都合主義と、推理する行為が好きな読者なら怒りそうな展開にナニコレという気分にもなったが(あとからこの作者はそういう人として、その筋では有名と知った…)、主人公が事件に巻き込…

流 (講談社文庫) / 東山彰良

青春小説としても台湾の一時代を切り取ったドキュメントとしても面白かったが、何より主人公の見る景色や経験がまるで作者の実体験のようなリアリティで迫ってきて、そこに幻想的な光景が違和感なく入り込んでくる様が小説を読む醍醐味を存分に味あわせてく…

高い城の男(ハヤカワ・SF・シリーズ) /フィリップ・K.ディック 著、浅倉久志 訳

ディックの代表作のひとつというのに初めてちゃんと読んだ。本物と紛い物というモチーフが作中のアイテムのみならず物語世界の存在自体にも仕掛けてあって、全編をリアルの不確かさが覆い尽くす感覚がハードボイルドな雰囲気と併せていかにもディック的で、…

フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉(講談社) / 神林 長平

いつも通りに言葉と世界を題材として扱いつつもアニメ化されてもおかしくなさそうなキャラクター(ニートの中年だけど)が登場して軽妙な掛け合いが楽しめる作りは久しぶり。当然面白かった。キャラも立ってるし、サブタイトル(?)に〈倭篇〉と謳ってて、『…

冷血(上・下) (新潮文庫) / 髙村 薫

被害者と加害者の運命の交差路までの道程が綿密に描かれ、何気ないエピソードが物語としての事件の伏線となり、そうして発生した事件に現実の凄惨な事件を目の当たりにした時と同様の感情に襲われ、というところまでで犯罪小説として存分に面白いのだけど、…

安達としまむら9 (電撃文庫) / 入間 人間

『安達としまむら』というよりは『日野と永藤』という方がしっくりくる、番外編的な一冊だった。物語としては前巻で決着済みということもあり、ここまで来るとサブキャラクターたちを色々と掘り下げてくれるのもファンサービスとしては嬉しくはあるけど、個…

安達としまむら8 (電撃文庫) / 入間 人間

最終巻というわけでもないのにエピローグというか作品世界の後日譚も見せてくれて、それは今後安心して都度都度のエピソードを楽しめる有難いサービスだった。(『グインサーガ』で悶々とさせられた身としては特に…)。で、修学旅行でのアレコレは、しまむら…

安達としまむら7 (電撃文庫) / 入間 人間

ゆるふわでイチャイチャしてるラブコメ(百合)小説の王道みたいな展開だけど、ここに至るまでの積み重ねと紆余曲折があるので、楽しさはひとしお。ヤヒロの存在も、箸休め的な効果だけでなく、安達としまむらの狭い世界の視野を時折り拡げて見せてくれてて…

安達としまむら6 (電撃文庫) / 入間 人間

このまま2人の関係性はそのままに物語が続くと思っていたので、ちょっと意外な展開だった。物理的な距離は近づきつつも精神的距離は平行線を辿るのかなと思ってたが、しまむらの実家で飼っている老犬と安達をオーバーラップさせて、しまむらの安達への感情を…

安達としまむら5 (電撃文庫) / 入間 人間

今作での安達の独占欲と依存ぶりの暴発はかなり病的で、軽くて楽しい物語はほとんど崩壊寸前、しかもその感情の発露を冷徹に受け流して否定するしまむらとの温度差は最高に広がっていく。それでも重くなりすぎることはないし、2人の関係性の行方も気になって…

安達としまむら4 (電撃文庫) / 入間 人間

誰かとの距離が近づくと同時に他の誰かとの関係性が簡単に解消したりする学校という狭い世界の中での人間関係のいびつさ、奇妙さを巧みにサラッと描きながら、そんな中でしまむらだけを眼中に据えて猛進する安達と、それを見守る達観したしまむらの温度差が…

安達としまむら3 (電撃文庫) / 入間 人間

しまむらと幼馴染の樽見とのエピソードで、どこにでもある『友達』との関係性を残酷なぐらいドライに描いたり、しまむらのキャラクターのゆるふわな外面と内面の虚無ぶりがほとんどホラーかというぐらいだったりするのに、それでもやっぱり軽快なラブコメと…

安達としまむら2 (電撃文庫) / 入間 人間

この巻辺りからだんだんと安達がちょっと不安定で挙動不審な今のキャラクターになってくる。で、しまむらと安達が交互に語り手となって物語が進行することで、2人のズレ具合が漫才的な面白さにもなっているんだけど、そんなまったりとした青春モノのような面…

安達としまむら (電撃文庫) / 入間 人間

全巻読んだ後で思い返して書いてるからなんだけど、最初は安達もしまむらもキャラが定まってなかったのか、計算通りなのか随分雰囲気が違う。しかし青春小説そのものの細かな感情の機微と、本筋から外れたようなヤシロというSF的存在の共存で、シリーズが持…

世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌 / 「文學界」編集部

放置していて読み終わったのがヴェネチア受賞後というのがアレだが、それは偶然。で、内容はほとんどが対談を含めた本人の語りやインタビューで構成されていて嬉しいし、長谷川和彦とのエピソードなど特に面白かった。なかでも監督本人が自身の作品のバラン…

エンニオ・モリコーネ、自身を語る (河出書房新社)/エンニオ・モリコーネ、アントニオ・モンダ 著、中山 エツコ 翻訳

聞き手の作家とモリコーネとの数度に渡る対話形式で、話題もその都度大雑把に選択されているので、年代ごとにじっくりとモリコーネの足跡を辿るようなものではなく、ざっくりしたインタビュー本といった感じで読み物としては物足りない。しかし温和な語り口…

BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか(柏書房)/キム・ヨンデ 著 、桑畑 優香 訳

なぜ世界的に成功したのかについての考察とディスコグラフィーのレビューで構成された防弾本。BTSは世界的成功の割にキャラクター以外の部分に言及されることが少ないから新鮮ではあるが、やはりアーティスト本はバイオ本や本人たちの言葉が主体のもののほう…