今作が新たな代表作とは言えないが、神林クオリティを持ったSFとして面白かったし、生身とアバターという主題の一つは今でこそ当然とは言え、神林は生身と拡張身体という形でこれまでもやってきているので、さすがの先見性を感じた。
だれの息子でもない/神林 長平
三章仕立て。一章は珍しく(と言っても震災以後はその方向か)現実の社会状況を反映させて進行するが、二章以降はいつもの現実と観念的世界ごちゃまぜのドタバタへ。なので統一感は薄いが、神林作品にはよくあるパターンで、各場面で脳みそをグリグリと刺激してくれる面白さではある(連作短編の色合いも濃い)。