ウォシャウスキー姉弟監督のオリジナル脚本によるSF大作。SF映画を更新するような革新的な作品というようなものではなかったが、観ていてニヤニヤしてくるほどに相変わらず中二病スピリット満載の大作映画になっていて、しかも本家本元だけに呆気にとられつつその本気度が楽しい、という不思議な作品ではあった。
まずストーリーだが、うだつの上がらない人物が実は選ばれし者で、という古めかしいジュヴナイルSF的プロットを大真面目に踏襲していて、現代の感覚で物語に没入していくのはかなり厳しい。主役のミラ・クニスが魅力的なのと、お得意のガジェット満載のダサカッコいい戦闘シーンで何とか引き込まれていくものの、全編通して辻褄、人物たちの行動原理が疑問符だらけで、おまけに明らかに作品のトーンとテンポを停滞させるだけのエピソードを挿入していたりで、かなり破綻している印象。
あと、ウォシャウスキーは『マトリックス』シリーズでエージェント・スミスや双子といった敵役の造形によって物語そっちのけで作品に楽しさを与えてくれていたが、今作では敵のデザインや特性が弱くて残念。怪物然としたクリーチャーが最大の敵で、しかもチャニング・テイタムと殴り合いで決着。いくら古風なスペースオペラ調とはいえあんまりだ。せっかくペ・ドゥナが空飛ぶバイクにまたがって登場するのに(しかも最初はウォシャウスキー、またしても草薙素子ポーズやらせてる)。完全にペ・ドゥナの無駄使い。
かなり期待した↑
更に、繰り返される日常や日々の労働の大切さを数々の冒険を経て実感出来るようになったのかと思いきや、そこは別口で満たされてる余裕からこなしてるだけというズッコケるオチを始め、人間不信や老化をテーマに打ち出しつつもそれを追求することもなく、ただただ感性の赴くままに思いついたことを具現化していっただけという作り。まあしかしそこは中二的感性としてある意味潔いのか。
とはいえ今時巨大戦艦やワープを登場させて、好き放題のスペースオペラぶりを大画面でやってくれるだけで、実はかなり楽しかったりもする。オリジナルで金もかけてSFをやりましたという一点だけで評価するというのはそろそろダメかなとも思うが、やっぱりこういうのは必要だし、嫌いになれないと思うのだった。