1970年代のロサンゼルス。別れた恋人のシャスタ・フェイ(キャサリン・ウォーターストーン)から彼女の愛人である不動産王を巡る陰謀について相談を受けたヒッピーで探偵のドック(ホアキン・フェニックス)。シャスタへの未練を捨て切れない彼は彼女の身を案じて調査を開始するが、幻想の理想卿ロサンゼルスにうごめく金と権力とドラッグの迷宮へと迷い込んでいく。
トマス・ピンチョンの原作は未読。今回のタイミングで文庫にしてくれないかな〜と思ったがそれは無いみたい。ポール・トーマス・アンダーソン監督作品。
全編マリファナの煙に覆われた軽い酩酊状態で進んでいくので、楽天的な世界に金と暴力、権力という底無しの闇が侵食している様を描いていも全体に可笑しみが漂よい、重苦しさ薄めで探偵映画としてサクッと楽しめて良かった。プロット自体も主人公の探偵が損得抜きにある家族を守る話を中心に据えた、実はかなりオーソドックスなハードボイルド物だ。
主演のホアキン・フェニックスは特別彼だから凄いとかいうことは無いのだけど、映画に馴染んでいて良かった。ジョシュ・ブローリンも同様で、途中日本料理屋で何か叫んでいる場面は「もっとパンケーキ!」と言っていたらしいが全く聞き取れず。突然訳分からんことわめいているかと思って面白かった。オーウェン・ウィルソンはいつも通りのキャラクター。初登場でうっすら顔が隠れての登場だが、すぐに彼だと分かっておかしい。ファムファタール的な役回りのキャサリン・ウォーターストーンは何かのっぺりしてるな、ぐらいの印象。しかしどんな役でもいけそうな気はした。
それと音楽の使い方が気持ち良くて、しかもあんまりうるさくないのでひょっとして今回ジョニー・グリーンウッドじゃないのかなと思ったぐらい。終盤いつもの感じになってくるけど。ミュージシャンでいうと今作は語り部のヒッピー役をジョアンナ・ニューサムが演じていて、謎めいた感じと70年代フィーリングがピッタリな人選だった。この人演技も出来るんだ〜、と思ったが実は『スカイクロラ』の英語版で吹替もやってたらしい。知らなかった。
というわけで役者も音楽も良かったし、愛と平和の季節という幻想の終わり、主人公自身も失われた愛の幻想に振り回され続けるという苦味に満ちた物語ながら、全編に漂うユーモアと主人公の利他的な行動が光明となり、影と光が絶妙に混ざり合った世界を創出していたりで、かなり面白かった。原作も読みくたなったな〜(文庫になれば)。
映画『インヒアレント・ヴァイス』予告編【HD】2015年4月18日公開 - YouTube