いい評判聞いた事なかったが面白かった。当時は怪獣映画の不満点を解消して現代的に構築された平成ガメラシリーズが完結した直後で、もうゴジラはいいだろうという気分だった気がするのだが、実は今作、平成ガメラを仮想敵と見做したような打倒ガメラの意気込みに溢れた力作だった。
敵は最初、小島と見紛うような巨大な岩塊として登場。しかもそれが浮上して飛行をするので見かけ的にはほとんどガメラだ。更にはビルの屋上に鎮座して、平成ガメラの敵役ギャオスの巣作り行動を模倣したような描写まで見せた挙句、この岩塊型宇宙怪獣(?)はゴジラの細胞を吸い取って自らゴジラになりきろうとする。これはもう一時期怪獣映画の主役の座を奪った平成ガメラシリーズのメタファーとしか考えられない。そして当然にゴジラがそれを粉砕。見事怪獣王の座を奪還するという映画じゃないか、と妄想して観るとかなり面白かった。もっともこの2年後にゴジラシリーズは監督として平成ガメラの金子修介を迎えるんだけど…。
逃げ惑う群衆をちゃんと描いたり、アングルや建造物の配置で巨大感を演出したり、咆哮の凄まじさを見せてくれたり、と押さえるべき部分をきちんと押さえてくれていて、見せ方や造形はレジェンダリー版に影響与えてるんじゃないかとも思った。佐野史郎がゴジラファンならではの熱いリアクションだったり、子役が嫌な感じのしないませガキぶりで可愛らしかったりとキャストも良かった。
ただ、物語の世界観として、ゴジラ出てきてもそれほどパニックにならず、時々ゴジラがでてきて困るな〜、ぐらいのものらしいのがよく分からないというのはあったし、主人公篠田が東海村のゴジラ大暴れ現場へバイクで向かっている横を地元民がくつろいで歩いているという気の抜けたショットがあって、目前でゴジラ暴れてるんですけど…という緊迫感がいっきに冷めてしまう手抜かり描写が目に付いたりと不満点もそれなりにはあった。しかし平成ガメラを踏まえた見せ方でゴジラをリブートしたプラス面のほうがマイナス点を大きく上回った良作であることは間違いない、…と思う。