冒頭、落武者禿げで登場するステイサムのインパクトで期待出来ると思った通り、王様と乞食的なプロットで社会の下層から世界を描写する試みをステイサムを据えてエンタメとしてやってしまった為に独特の味わいの作品に昇華していた。よく考えると実はよく分からないテーマ性とか諸々あるのだが、面白かった。
どん底状態のステイサムがいつもの無敵ステイサムに成り上がっていく様が面白いのだが、そんなステイサムが決してヒロイックではなく、むしろ無敵になるにつれてその暴力性が浮き彫りになっていくというのが新鮮だった。
物語としてはステイサムの心の拠り所として登場する暴力と真逆の世界の象徴であるシスター(アガタ・ブゼク)との心の交流と恋心が、少女を助けるという使命、更には富豪成りすましというエピソードとごちゃ混ぜになって、一体何をやりたいのかよくわからないことになっているのは勿体無い気もしたが、先述の成り上がりステイサムの面白さと下層の苦味のハードボイルド加減で全体としてはあんまり気にならない。当たりのステイサム映画だった。