クリストファー・マッカリー監督作品。
とにかく俳優としてもプロデューサーとしてもトム・クルーズの仕事が素晴らしすぎる。今作の売りにもなっている生身で飛行機ぶら下がり、しかもスタント無しというアクションへのチャレンジが凄いし、実際観ていて驚愕の映像なのだが、更に凄いのはこれをあくまで冒頭の掴みとして使ってしまっているところで、自分が作った映画でここまでやったら最大の見せ場にしたくなるだろうにクライマックスで無理矢理使うこともしていない。トムほどの立ち位置でここまで危険な演技をする俳優はなかなかいないし、エゴより作品を優先しているのが分かって、映画への情熱と愛情が伝わってくる。
監督や俳優の人選も含めてプロデューサーとして目利きぶりも際立つ。特に今作のヒロインにレベッカ・ファーガソンを抜擢したのは流石。一見古風な美人なのに、猫のような表情で可愛げを見せたりトムと同等のアクションをこなしたり、ハードボイルドな哀愁を漂わせたりとトムの相手役として充分な存在感でかっこ良かった。
そのレベッカ・ファーガソンが演じるイルサ自体のキャラクターも良くて、イーサン・ハントがいつの間にか迷いの無い正義のスパイになって、私生活もどうなってるのかよく分からなくなってしまったぶん、スパイの悲哀と迷いを一身に背負ったキャラとして作品に新たな色彩を加えていた。
そんなスパイの悲哀要素や終盤のなんちゃって頭脳戦的な要素の投入でアクション大作として行き着いた感のあった前作とはまた違った古典的なスパイアクションの雰囲気を加味してさらなる高みへ到達させたストーリーも楽しいし、ウィーンのオペラハウスでのシークエンスなどアクション大作の予算の潤沢でゴージャスな投入の仕方も素晴らしかった。アクションも例の飛行機ぶら下がりを始めとしてBMWのオードバイチェイスでのスピード感も半端なかったりと見所に事欠かないが、個人的にはサイモン・ペグの出番と重要性の増加が何より嬉しい。彼の存在が映画に軽妙なタッチを与えていたのも良かった。
映像もフィルムの質感が作品にハマっていて、特に終盤の雨に濡れた夜のロンドンはホントに素晴らしかった。そこで繰り広げられる実質的なラストバトルをやるのがイーサン・ハントじゃないというのもトム・クルーズやるなという感じ。ここでのバトルもエグさギリギリのサジ加減のエンターテイメントになっていて良い。
次作以降ではイルサが峰不二子的立ち位置で活躍したりするのかな、とか色々妄想も拡がるので、トムさんの肉体が保つ限り続けて欲しいシリーズだ。