仕事も恋愛も流されるままにこなしてきた志乃(多部未華子)は失恋を機に心機一転を図る。そんな折、引越し先のアパートの隣人、京志郎(綾野剛)を初めて見た志乃は、心の中に「風が吹いた」と感じ、今までと違う恋の予感を持つ。京志郎は偶然にも志乃の新しいバイト先であるレンタルビデオ店の店長でもあり、志乃は彼との恋愛を成就させようと行動を開始する。しかし京志郎にはにはあかり(光宗薫)という同棲相手がいて…。監督田口トモロヲ、脚本向井康介。
アパートの隣の庭に運命の相手が爽やかに登場したり、恋する相手の同棲相手が小説家デビューをして、わざわざことの顛末を公開してくれたりなどと、映画で見せられると嘘臭さが目立つ展開が目白押しながら、恋愛に関する描写は生々しさが濃厚でファンタジックな少女マンガ映画とは異質なムードが漂う不思議な映画だった。それだけに絵空事でない他人のチャラチャラした恋愛を見続けるのはかなりの苦行にもなりそうだけど、多部未華子のリアルだけどあり得ない可愛さと安定の大友良英の劇盤でいやな感じは無かった。
あと東京ローカルのアングラ文化が描写されているのも独自の味になっているのだけど、そこでワイワイやってる人達がみんな楽しそうで、ただでさえ美男美女の恋愛話を見せられているのでケッという思いが去来したのはあくまで個人的気分だが、こういう描写は時間を経て観直した時に面白味を感じたりするので多分あった方がいいのかな。
劇中でロマンポルノの作品名を言及しているのは単なるポーズではなく、少女マンガ映画のフォーマットにロマンポルノ的エロスを持ち込んでみるという作品の方向性を示していると思ったが、結果として多部未華子がひたすらエロい映画になったところに田口トモロヲが監督した甲斐があったな、とは思った。ちなみに綾野剛が一番脱いでた。