物語はストレートに『GONIN』の続編で、金庫襲撃、ヒットマンによる報復、最後の討ち入りと19年前の出来事をなぞるかのように展開していく。デジタルとはいえ、雨と夜の質感は『GONIN』の映像に比べてそれほど違和を感じさせないのが嬉しかった(撮影佐々木原保志、山本圭昭)。安川午朗のテーマ曲と空撮にも当然燃えた。ただ物語の核となる主人公たちの集結の理由、金庫襲撃や最後の討ち入りの動機が弱くて、追い詰められた男たちのエモーション爆発の反逆劇とその背後の闇が凄まじかった『GONIN』の続編としては少し物足りなさを感じながらクライマックスを迎えた(で、以下ネタバレ)。
しかし、そんな風にちょっと物足りなさを感じながら迎えたクライマックスで、氷頭(根津甚八)の震える腕を支えるために万代(佐藤浩市)の幻が降臨!その瞬間涙腺が決壊した。ちょっと『イノセンス』でバトーの眼前に草薙素子が降臨した場面を思い出したよ。…しかしよく考えると氷頭と万代の関係性ってこんなだっけ、という気がしないでもなかったが、これは氷頭の最後の一撃に万代が助太刀したというより、役者根津甚八の最後の一撃を役者佐藤浩市が介添えした瞬間として高揚した。なのでもう今回の『サーガ』は名作『GONIN』へのノスタルジアと根津甚八引退の舞台としてだけでも個人的に充分面白かった。
あと、病気でほとんど動けない根津甚八に容赦なく演技をつける石井隆とか、安藤政信が桐谷健太をマジ蹴りしてたなどという熱い話がスタッフ、キャストのコメントであって、そのパッションは確かに映画に表れていた気がする。竹中直人の殺し屋のキャラクターを微妙に『GONIN』での中年オヤジとリンクさせて不思議な雰囲気にしていたのも石井隆的な幻想味になっていて良かった。相棒の福島リラも怖くて良かった。
『GONIN2』とは何だったのか(緒形拳はカッコよかったが)とか。
そういうことも色々思いつつ楽しませてもらったので、とにかく興行的に成功して欲しい。『人が人を愛することのどうしようもなさ』DVDの監督コメンタリーで、石井隆が椎名桔平にまた一緒に映画やろうよ、と言ったら「冗談でしょ⁉︎」と返されたというエピソードもかなり悲しかったが、そんな風に評価と裏腹に何となくマイナーな扱いの状況を逆転して欲しい。『GONIN』をこれほどの規模で再びやり遂げたということ自体奇跡的なことだし、根津甚八の奇跡の復活というトピックだけでも必見作だ。