ドゥニ・ビルヌーブ監督、アーロン・グジコウスキ脚本。
かなりハラハラドキドキした。映画のサスペンス要素と全く別の次元で。具体的には精神薄弱者の取り扱いに対してなんだけど、このままぞんざいにやってしまうの?それとも社会的、常識的な正しさに落とし込んでくれるの?というところでドキドキした。結果的には微妙な感じに着地していて、いい意味でも悪い意味でも後味が悪いのは、映画内で起こっている陰鬱な事件のせいというのは半分ぐらいで、残りは思想的な危うさからくる嫌な感じのような気がしないでもなかった。
映画自体はいかにも作り物的な二転三転の展開がバカっぽくもあるが、演出が重厚かつシリアスで、ロジャー・ディーキンスの撮影も雰囲気があるおかげで、なぜだか奥深い映画を観ている気になった。なのであまり辻褄など気にせず、サスペンス映画として楽しむことはできた。
監督とジェイク・ギレンホールコンビの『複製された男』とは作品としても役者としてもイメージが全く異なる世界が構築されていて、職人的な技術力の高さを両者ともに感じたりはした。あとはヒュー・ジャックマンの筋肉暴力親父演技が安定していた。しかも娘が誘拐されるという展開も父親がヒュー・ジャックマンなら我が身に引いて身につまされるということも無く安心して鑑賞出来て良かったよ(?)。