yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

ゴーメンガースト / マーヴィン・ピーク著 浅羽莢子訳

前作の感想↓

    古い石造りの城とそれに呼応した修辞技法満載の文章で暗く深いゴーメンガーストの世界そのものを描き切っていた前作から一転、今作では確立された世界の中で登場人物たちが軽やかに動き回る冒険活劇の面白さを存分に堪能させてもらえた。しかもうちの子供達と同じ構成の幼い姉弟物という形態に無条件にテンション上がった。
    タイタス、フレイ、ブルーンスクワラーによるスティアパイク追跡劇は読んでいて心臓がバクバク脈打つぐらいの息詰まる緊張感があり、フューシャの物語には心えぐられる深い喪失感を与えられた。スティアパイクとバーケンティンの死闘や最後の戦いも感情を揺さぶる場面の連続で、これは前作でキャラクターが確立されているからでもあるが、作者(と訳者)の語り口が何より素晴らしかった。しかしそんなキャラクターたちは次々と退場していき、タイタスの乳兄妹の「やつ」など呆気にとられるほどなアレで、これだけ魅力的な登場人物たちを描きながらもどこか突き放したようなキャラクターとの距離感も絶妙だった。
    そんな血生臭い陰謀劇や戦いの凄まじい描写の一方で、ベルグローヴ塾長とイルマの熟年恋愛話があり、しかもここでは二人の感情の機微を見事に捉えていて、どちらもゴーメンガーストの世界を描くという視点の下、同等の熱量で描写されていて面白かった。
    あと、祭りの場面では宮崎駿諸星大二郎作品にも通ずる異界と繋がるような祝祭空間を現出させていてゴーメンガースト世界がさらに奥深く拡がっていく感覚を味わえた。そういえば巨軀の超越的女性というグローン伯爵妃ガートルードは、いかにも宮崎駿作品に登場しそうなキャラクターだが、実は影響を与えたりもしているのだろうか。
    ゴーメンガーストの物語はまだ続くが、感覚的には今作で完結だとしても納得出来る満足感で、これが半世紀以上前の作品というのはホントに驚愕だ。楽しかった。

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