CGの人工性を存分に活かした潔癖で美しくも非人間的な都市描写はパステルピンクを基調とした異様な色遣いと相まって他では見たことのない独特の映像美を堪能させてくれたし、ハードSFに耐え得るリアルさとアニメならではのデフォルメ(萌え?)のバランスが絶妙で魅力的なキャラクターたち(原案redjuice、デザイン田中孝弘)も観ていて気持ちが良かった。特にこのキャラクターでのトァンたちの女子高時代における百合世界は少女マンガ的耽美ぶりが素晴らしかった。というよりこの映画、SF的テーマよりもその筋の作品として、より面白かった気もする…。
作品テーマとしては、日本を生暖かくて優しい世界と位置付けた前提が、ヘイトが大手を振るい、暴力による平和を志向する国へ変容してしまった現実によって通用し難くはなっているものの、それが逆に感情を排して調和を到来させるハーモニープログラムの受け取り方に、より多層的な意味を想像させて、それはそれで感慨深かった。
アニメーションそのものもCGならではの面白味がちゃんと生かされていて凄く良かった。理屈の詰め込まれた設定やストーリー展開で静的な場面が多いところをCGアニメの利点を生かして背景をグリグリ動かし感情面を演出したり、物語世界を様々な角度から見せていくことで躍動感を出したりと全く飽きさせず、画面そのものにワクワクして観続けられた。
全体として伊藤計劃による原作のテイストを感じさせながらアニメーションの快楽も両立させた力作で、想像以上に面白かった。