冒頭のシークエンス、メキシコ死者の祭りでのダイナミックかつ流麗な映像に圧倒されて『スカイフォール』級のアーティスティックな傑作の予感をビシビシ感じさせられて、さらに前作と同じく英国演歌なオープニングタイトルでの幕開けに期待値はMAXになったが、その後はいつもの007だった。
もっともいつもの007として、アクションのメリハリや迫力、ボンドガール=レア・セドゥのしなやかさと強さを併せ持った美しさでかなり楽しい部類の作品ではあった。加えてQ(ベン・ウィショー)やマニーペニー(ナオミ・ハリス)を加えたチーム物やシリーズ物の醍醐味もあるんだが、しかしそこはミッションインポッシブルシリーズに寄っているだけに逆にあちらのてらいの無いスパイガジェットの使いこなしや荒唐無稽なアクションレベルの高さと脳内で比較してしまって、中途半端な感は否めない。あと本来の007シリーズに寄せるにはダニエル・クレイグの顔面が真面目過ぎるのがキツイか。好きだけど。
とは言えまるでシリーズの最終章のようなエンディングを迎えてしっとりさせといて(ボンドはスパイを辞めて愛に生きますみたいな)、すぐにエンドロールで「ジェームズ・ボンドは戻ってくる」なんてドーンと出してくるあたり、重々しい決断を下したように見せといて、なんて軽い奴なんだというツッコミを入れさせる軽薄ぶりがやはり007ならでは、かも知れない。