通常ハリウッド映画では法というものが人を縛り正義を拒むものとして扱われ、超法規的な活躍こそが観客の溜飲を下げるというパターンが多い中、今作では法に基づいた至極まっとうな行動が感情や感覚で揺らぐ社会に対する主人公の正義を支える柱として描かれていて、そのことが歴史的物語を語りながらも現代において提示する意味のあるものに作品を昇華していた。
ブリッジ・オブ・スパイ (2015)
弁護士ジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)はFBIに逮捕されたソ連スパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)の弁護を依頼される。世論の非難を受けながらも法の裁きを尊び弁護を引き受けたドノバンは、やがて死刑を前にも使命への責任感を失わないアベルに思想を越えた友情を感じていく。そして5年後、偵察飛行中の米軍パイロット、パワーズ(オースティン・ストウェル)がソ連領内で捕獲される。パワーズ奪還のため政府はかつてドノバンの尽力により死刑を免れ懲役に服しているアベルとの捕虜交換を計画、その交渉役として再びドノバンに白羽の矢を立てるのだった。監督スティーブン・スピルバーグ、脚本マット・チャーマン、コーエン兄弟、撮影ヤヌス・カミンスキー、音楽トーマス・ニューマン。