冒頭、夢シークエンスから目覚めた主人公が「夢か…」と呟いた時点でこれはヤバイという地獄コースの予感に見舞われたが可愛い女の子がひたすら走るアクションシーン連発でテンションが上がってきたところでアイドルの怪しい運営スタッフとして津田寛治が登場、解散回避の為のミッションを下すという安ドラマ的な役回りなのに石井隆的な昭和アイドル情念映画の香りを漂わせる演技に目が離せず楽しくなった。あと多分予算の関係なんだろうけど螢雪次朗とか出てきて、キャストの人選も嬉しかった。
アイドルグループ「LinQ」の映画ということになってはいるけど、主要キャラクターと物語の焦点を絞って散漫な作品になることを回避しているのも良かった(もっと一ノ瀬さんや深瀬さんを見たかった気持ちもあるが)。あと友情が危うくなったり結束が固まったりといった主人公たちの気持ちの浮き沈みが小刻みに上下していて、クライマックスまでに段々と盛り上げて収斂させるような高揚感は無かったが、その平坦なプロットと役者としてほぼ素人の女優たちの拙い演技が逆に素の彼女たちの姿を透かし見せるようで、青春映画としての醍醐味が増していた。演技でいうと特に大庭彩歌の三枚目的演技のやらされている感が凄いが、それすらも現実における本来の自身の指向性と期待される役回りの齟齬を表しているようで悪くなかった。
それとここ最近のLinQの曲はイマイチ良いと思えなかったが、今作のエンディングでの新曲や劇中で使用された曲を聴いていると、改めてクオリティの高さを実感したし、さらに福岡の名所観光映画としてもツボを抑えた作りになっていて、意外にも(失礼だな)楽しい映画だった。