yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

リップヴァンウィンクルの花嫁 (2016)

     ネットで知り合った鉄也(地曵豪)と結婚することになった臨時教員の七海(黒木華)は出席親族が少ないことに悩み、ネットで知った「何でも屋」安室行舛(綾野剛)に代理出席の業務を依頼する。その甲斐もあって何とか挙式を済ませた七海だったが、鉄也に浮気の疑いが起こり、安室に調査を依頼するものの結局結婚生活は破綻して職と家を失ってしまう。生活のため安室から仕事を紹介してもらった七海はその仕事の中で里中真白(Cocco)と出会い、互いに意気投合して親密になっていくのだが…。監督・脚本岩井俊二、撮影神戸千木、音楽桑原まこ。

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    冒頭から柔らかな映像とショパンを始めとしたクラシックピアノ曲の組み合わせで岩井俊二作品以外何物でもない味わいを感じるが、さらに学校場面での集団から発せられる『リリィ・シュシュ』的な悪意のムード、黒木華Coccoによる女子コンビの仲良し描写での『花とアリス』感と岩井俊二節全投入の勢い。更には冠婚葬祭場面でのいたたまれなさを重さと笑いのキワキワで見せていくなど映画的満腹度は中盤までで十分満たされた。

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    ただし総体としてはとっちらかった話を無理矢理まとめたような散漫な印象で、思いついたエピソードを継ぎ足し貼り付けして一本にまとめた感じだった。逆にそこがドジでダメだがギリギリのところで悪運のある主人公七海(のび太系)が超越的な存在綾野剛(喪黒福造系)と他人の人生を覗いていく藤子不二雄の短編集のようなものとして楽しめる部分ではあったけど。

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   以下ネタバレ。

   主人公の七海は映画の始まりから終わりまで殆ど成長しなくて、自己主張出来ずに流されるままで一貫している。終盤、里中真白に一緒に死のうと言われるとそのまま付き合ってしまうのも彼女を唯一の拠り所としている不登校生徒が存在しているのをあっさり忘却もしくは放棄する責任感の欠如、思慮の浅さで、共感するような作りではない。中盤からの主要人物の里中真白も色々問題を抱えていて同情を誘うキャラクターではあるが、七海の命こそ奪わなかったものの、そこへ至る過程の自己中心ぶりが凄まじく、彼女たちの水先案内人たる安室も最後に号泣したりして心があるかにも見えるが、それまでの流れから考えると、単にその場に適した行動を条件反射的にとっているだけと思える。なので今作が何か感動話みたいに見えるというのは違って、かなり冷めた人間観察映画として観たのだけど、監督の実際の意図はどうなんだろうな。個人的にはそういう作品として楽しんだけど。

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    あと黒木華Coccoの百合的展開には『花とアリス』を思い起こさせられたが、今作では年齢が高いのもあって少女マンガ的要素が薄く生々しさが強い。Coccoのキツい顔付きと合わせていつもの幻想味より現実感が先行しているのは多分狙いなんだろうけど、一方では綾野剛演じる安室の非現実的キャラクターが大暴れしていて、現と夢の曖昧なムードが悲劇と喜劇の合間を漂うストーリーとともに増幅されて不思議な世界を作り出していたのも面白かった。

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