yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

シン・ゴジラ (2016)

    東京湾に突如現れた謎の巨大生物が東京に上陸。失踪した牧博士(岡本喜八)が残した資料によりゴジラと名付けられたそれは自衛隊の攻撃も受け付けず、自己進化を続けながら東京を蹂躙する。国連安保理は遂に核攻撃を決定し、そのカウントダウンが始まる中、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)らはゴジラを凍結させる独自の作戦で最後の賭けに出るのだった。総監督、脚本・庵野秀明、監督、特技監督樋口真嗣、特技統括・尾上克郎、音楽・鷺巣詩郎

 

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    ゴジラのことは観客の誰もが知っているのに作品世界の住人だけがその存在を知らない、というリブート物の設定繰り返し問題は、冒頭から出し惜しみの無い怪獣登場とその進撃開始によってあっさりと解消してくれたのでまずは安心したのだが、ここからの序盤の畳み掛けは特撮のきめ細やかさと、ドラマパートも含めてのやり過ぎな面白アングルを連発する気合いの暴走でテンションがどんどん上昇していき無茶苦茶楽しかった。

 

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   で、ゴジラが動くシーンはほぼ全て素晴らしい出来で、クオリティも高いのだが、やっぱり全編ゴジラを動かす予算はあるはずも無く、中盤からはドラマパートが幅を利かすのだった…。そのドラマパートは名のある役者が大量投入されていて、これは総監督、監督ともに人間ドラマの演出をやれないのでとりあえず物量で乗り切ろうという作戦なのか。

 

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   こちらとしても対策チームに塚本晋也&市川実日子(「とらばいゆ」コンビ!)や津田寛治が登場して盛り上がったりして、キャストの物量作戦に見事に引っ掛かって喜んだりしたのだが。ここは人によっては当然長谷川博己石原さとみでツボにハマったりするだろうから、キャストの物量作戦はけっこう効いているかも知れない。

 

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    しかしこのドラマ部分におけるプロジェクトX的な展開は幼稚にリアリスティックでかなりどうでもいい気分にはさせられた。押井守作品でも感じることだが、ミリタリーオタクが虚構作品に「リアル」な戦争描写を導入すると、人が内臓垂らして血まみれでのたうち回る現実からはどんどん乖離していくという状態がなぜか起こるというのがあって、今作では「日本のいちばん長い日」的な岡本喜八作品へのオマージュとしてやってる部分が大きいのは分かるが、今作に登場する政治家、官僚など法律を運用する人間が基本的に全員善人であるというのは、一見政治をリアリスティックに描いているだけにけっこうヤバイなと思った。どんな動きでも私利私欲、権力掌握や上昇志向に引き寄せてしまうのが人間だろうし、それは現実のトルコの現状などを見れば自明のことで、ちょっとお花畑過ぎると思った。SEALDsの出し方にしても「ゴジラを守れ!」は無いだろうし、もしあそこで学生デモが起こるならゴジラという存在に乗じて無茶な法案を提出するなどの事態に対してデモが起こるだろう。

 

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   いや、これは怪獣映画だし、というのはあるんだけど、庵野秀明の思惑がどうなのかは別として、コレを見て現実と混同したオタクがやっぱり緊急事態条項とか必要だぜと思いかねないのが、凄い楽しかっただけに大丈夫かよと思ってしまった。

 

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   とは言え、ラストカットの尻尾の先のアレが博士だとして、博士役に岡本喜八がキャスティングされているということからそこに国家への不信などといったメッセージも含めてくれているのかもという岡本喜八好きの師匠から聞いた希望的観測もあるし、そもそもアレが博士なら今作のゴジラは復讐戦としての姿勢が鮮明であるというのはあるんだけど。ちなみに既にこの世にいない犯人による世界への復讐戦というのは劇場版パトレイバーで、自衛隊の運用や怨念による復讐となると金子修介監督の平成ガメラやGMKをどうしたって連想してしまったよ。

 

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   で、日本のモノづくりの力でゴジラをやっつけるという展開は何だかな、と思いつつもエヴァの音楽とともに作戦進行となるとやっぱり盛り上がった。どうせなら下手にリアルにやらずにエヴァンゲリオンぐらい作ってゴジラ迎撃してよという気もしたが、ゴジラを冷却してとりあえず活動を止めることが対抗手段であることは今回のゴジラが原爆というよりも原発のメタファーであることを明確にしていたりするのでアリだとは思った。しかしその実行手段が重機で直接ゴジラへ経口により注入するというのはかなりのツッコミどころになっていて、どうやって瓦礫の山の中で重機を動かすのかとか、そもそも転倒時に巨大なゴジラの頭部の落下地点にピンポイントで待機させることも不可能で、この作戦に失敗したらエライことになる状況でそんな行き当たりバッタリでいいのかっていうのはあったんだけど。しかし今迄散々踏みつけられ続けてきた在来線がゴジラに復讐したり、通常兵器が効かないゴジラの無敵ぶりにも説得力があったりして全体的には色々モヤモヤしつつも存分に楽しませてもらったのだった…。

 

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『シン・ゴジラ』予告 - YouTube

 

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