離陸後、バードアタックによってエンジン停止状態に陥った旅客機をハドソン川に着水させ、乗員乗客155人の生還を成功させた機長のサレンバーガー、通称サリー(トム・ハンクスを)。一躍英雄となったサリーだったが、彼を待ち受けていたのは国家運輸安全委員会による厳しい追求だった。監督:クリント・イーストウッド監督、脚本:トッド・コマーニキ、撮影:トム・スターン、編集:ブルー・マーレイ、音楽:クリスチャン・ジェイコブ&ティアニー・サットン・バンド。
ザクッとした大雑把な編集による時間軸の構成にも思えるのに旅客機墜落というアクションを程よいバランスで組み込んで、しかも実話の映画化で大筋は誰もが知っている前提の中で適度な緊張感を維持してエンターテイメントに昇華したイーストウッドの手腕が光る佳作で、主人公の機長が特別なことでなく、プロとしてベストな仕事をこなすことで正しい選択と人命救助を成し遂げる姿がイーストウッドのプロフェッショナルな映画作りと重なるような作品。
脇の役者もいい味出していて、特に副機長のアーロン・エッカートの、いつものタフガイじゃなくて、ちょっと抜けてる感じが気のいい相棒役にハマっていた。トム・ハンクスはいつもと同じだったけど、この人「ブリッジ・オブ・スパイ」でも似たような立ち位置だったな。
中でも観ていて気持ち良かったのは、演出を抑制し、感動物の大仰さを排して「ニューヨークのいい話」をコンパクトな尺で「いい映画」に変換していたところ。それにしても「アメリカン・スナイパー」撮ったあとでこういう作品をサクッと出してくるイーストウッドって、凄まじい老人だ。