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yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

ゴースト・イン・ザ・シェル (2017・米)

    人と機械の境界線が消えゆく未来。事故により脳以外の身体を失った女性ミラ(スカーレット・ヨハンソン)は先進の義体技術を持つ軍需産業ハンカ・ロボティックス社のオウレイ博士(ジュリエット・ビノシュ)によって完全に義体化された唯一の人間であり、現在は総理直属の公安9課のリーダーとして荒巻課長(ビートたけし)の元、同僚のバトー(ピルー・アスベック)、トグサ(チン・ハン)らと電脳テロ犯罪に対抗する活動を行なっていた。そんな中、ハンカ・ロボティックス社の研究者を狙った電脳テロが発生。ミラはクゼ(マイケル・ピット)と名乗るテロリストの存在に行き当たる。クゼはミラのことを彼女以上に理解しており、ミラは彼と接触することで自らの曖昧な記憶の謎やハンカ・ロボティックス社のカッター社長(ピーター・フェルディナンド)の陰謀に気づき始めるのだが…。

監督:ルパート・サンダース、脚本:ジェイミー・モス、ウィリアム・ウィーラー、アーレン・クルーガー、原作・士郎正宗、撮影:ジェス・ホール、視覚効果プロデューサー:フィオナ・キャンベル・ウエストゲイト、視覚効果スーパーバイザー:ギヨーム・ロシェロン。

 

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   多分ネタバレしとります。

 

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   押井守監督版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は初めてスクリーンで観た押井守作品で、小倉昭和館に朝一友人と並んだことや来場者プレゼントでセル画をゲットしたこと、天神で行われた押井守川井憲次トークショーを見に行ったのもよく覚えていたりして、押井守フィルモグラフィーの中で特に一番好きというわけではないものの、やはり思い入れがかなりある。なので今回の実写化は不安100で期待0だったのだが、結果としては全然オッケーだった。もちろん別物として、だけど。

 

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    で、今回は日本語吹き替え版にて鑑賞。これはノスタルジーに浸りたかった訳ではなく、単に上映時間がそれしか合わなかったからという理由だが、ミラ(=草薙素子)もバトーも微妙に設定や性格が変わっているのに喋り方はアニメ版に準拠しているので、観ていてむず痒い感覚になってしまった。別物として鑑賞する意味でもオリジナル音声で観るべきだったかな、とは思った。エンディングは川井憲次の曲だったのだけど、これはオリジナル版でも同様だったのかどうかもちょっと気になるところ。

 

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   そして今作は押井版とは別物として楽しんだと行っておきながら何なんだけど、想像以上に原典へのリスペクトが散りばめらていたのは驚きだったし、やっぱり嬉しくなった。その原典というのは士郎正宗の『攻殻機動隊』というよりは押井版『攻殻機動隊』及び押井守作品全般になっていて、犬、しかもバセットハウンドをガブリエルという名前で登場させて出番も多かったり、飲食店での銃撃シーンが『イノセンス』のシーンそのままのイメージだったり、ミラの生家が『アヴァロン』だったり『イノセンス』と書かれたネオンが回っていたりなどという直接的なサービスまであり、やり過ぎなぐらいにやっていた。

 

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   また押井版『攻殻機動隊』を完全にトレースしたようなシーンも豊富で、実写によって提示されたそれらのシーンの出来は良かったりイマイチだったりとは言え、まさかハリウッド映画でこんな映像を見ることになるなんて…という感慨はあった。特に密集したビルの下方から狭く切り取られた空を飛ぶ飛行機を見上げるカットの再現などは感動してしまった。音楽もところどころに川井憲次風味や元々の劇伴の要素をとり入れたりしていて、リスペクトの本気具合が感じられた。

 

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    とは言え各シーンは原典をなぞりつつも語られる物語やキャラクターは全くの別作品として作られていて、そこが今作をちゃんと別物として楽しめたところでもあった。まず冒頭に登場する芸者ロボの動きの気持ち悪さが素晴らしくて、これは『イノセンス』での球体関節人形的な義体の動きが参考点なのかも知れないが、実写&CGでの表現によって全く別種の異物感になっていて、いいもの見させて頂きました、と思えた。風景の作り込みも細かくて、ブレードランナーの舞台を香港に置き換えてアニメ化した押井版をさらに実写(+CG)化することで独特の世界観を生んでいた。

 

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    草薙素子を西洋人が演じることは色々言われてもいたが、ちゃんとそれなりの物語上の理由付けはされていたし(そうやって理由付けをして西洋人を主役にすることの是非は別として…)、人間の理想形としての美しさで凛としつつも瞳で不安を語るスカーレット・ヨハンソンはミラという主人公に見事に同化していて、若い桃井かおりがダイブとかする姿よりはこっちのほうが良かったのではなかろうか…(それはそれで見たいが)。但しスカヨハのむっちり具合だと裸の上に薄い光学迷彩スーツという出で立ちがどうにもコントの相撲取りスーツフィーリングが漂っていて、それはちょっとダサかった。その点でいくと前々から言ってるけど太田莉菜草薙素子をやってもよかったのでは、と本気で思ったが。

 

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    物語としては押井版の〈人形使い〉に当たるクゼの役回りを、草薙素子にとって合わせ鏡のもう一人の自分といった存在ではなく、単なる幼馴染という形にして哲学的要素を排除し、肉体と魂の分離については語らずに、単純な黒幕、悪玉を用意して、親子の情愛や友達といった過去を取り戻す一般的な物語にしていたが、押井版と同じ話を繰り返しても仕方ないし、これはこれで良かったと思った。

 

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   ただ元の設定や物語を活かしながら新しい要素を導入した結果、色々よく分からないことになっている部分も多かった。主人公ミラは義体化しているとは言え、たった1年前までは単なるド素人だったのに公安9課のリーダーになっていて、そんな素人が率いている公安9課が大したことない組織に思えてしまったのは失敗かな。トグサの立ち位置もよく分からない上にカッコ悪いし、たけしの荒巻もただのヤクザみたいではある。しかもミラは原作そのままに少佐のニックネームで呼ばれているのだが、どこでどうそんな愛称が付けられたのかの想像が難しく、またそれだから互いに厚い信頼を寄せ合っているらしいバトーとの関係性も現実感が乏しくて、卑近なテーマに寄せておきながら元々あった三角関係的な恋愛要素が抜け落ちてしまったのも勿体なかった。クゼが素子と同化する意味もよく分からないことになっていたが、ひょっとしたら過去の思い出を共有出来るということになっていて、だとすると彼自身は救われるということなのかな。

 

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   ただ、そんな風に色々と歪な部分も目立つものの、『攻殻機動隊』というより押井守大好き要素が多すぎて微笑ましかったし、形而上学的なテーマを身近に引き寄せて改変しつつもやりたいことはやってる、というのは理解出来たし、結局楽しかったのだった。

 

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『ゴースト・イン・ザ・シェル』 | ファースト・トレーラー - YouTube

 

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