特殊な蜘蛛に噛まれたことで超人的能力を得てスパイダーマンとなった高校生ピーター・パーカー(トム・ホランド)は、アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー Jr.)にスカウトされてヒーロー集団アベンジャーズの戦いに参加したが、その後はスタークの部下ハッピー(ジョン・ファヴロー)の監視の下、ニューヨークの街でチンピラ相手のヒーロー活動にいそしんでいた。ある時、宇宙物質を利用した武器売買を行うバルチャー(マイケル・キートン)たちの悪事を知ったピーターは、トニーの制止を無視して一人戦いを挑むのだが。
監督、脚本:ジョン・ワッツ、脚本:ジョナサン・ゴースドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー、クリストファー・フォード、クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ、ストーリー:ジョナサン・ゴールドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー、製作:ケヴィン・ファイギ、撮影:サルヴァトーレ・トチノ、プロダクションデザイナー:オリヴァー・ショール、編集:ダン・レーベンタール、デビー・バーマン、音楽:マイケル・ジアッキノ。
主人公のトム・ホランドのスパイダーマンは可愛げがあって楽しかったし、相棒のネッド(ジェイコブ・バタロン)とのダメコンビ感やメイおばさん(マリサ・トメイ)、ジョン・ファヴローらの大人のキャラも良かった。さらに子供と観たので子供向けドラマをやっているゼンデイヤが出演していたのも嬉しかった。そして何よりマイケル・キートンが素晴らしかった。
最近のアメコミ映画では敵役の設定が一番の難点みたいで、他のマーベル作品でもサノスみたいなマンガチックな(漫画だけど)ボスキャラとか内輪揉めで戦ったりしているけど、今作の『忘れられた人々』を体現したような悪役バルチャーは心情的に共感出来るキャラクターに造形されつつも、自己の目的のために一線を越えることで物語の途中で完全に悪役として成立していく過程が丁寧に描かれていて説得力があった。
それを演じるマイケル・キートンが元DCのヒーローで、『バードマン』ではそれをメタ的に茶化されたりしていたのに似たような衣装に身を包んでの登場して、しかもその『バードマン』では前回のスパイダーマンでのMJの父親だったという何だかよく分からない状況になっているのも色々とイメージが膨らむ配役だし、悪役の怖さと庶民としての共感を両立させた演技も良かった。特にピーターと車内で会話するシーンには凄味があった。
今回、マーベルシネマティックユニバースへ吸収されたことで、世界の危機のような巨大な物語はアイアンマンを始めとするアベンジャーズに任せて、より身近な冒険にフォーカスを当てることが出来るようになっていて、年齢設定を高校生に引き下げ、活躍の範囲をより生活圏に密着させた青春ヒーロー物としてサム・ライミ版の呪縛から解放された新鮮さもあった。同時に単体作品として完結しないもどかしさとか、要素の詰め込み過ぎによる散漫さも発現していて、功罪両方あるのかな、とは思ったが。
青春物としてはトム・ホランドの存在感がいい味になっていたんだけど、そちらの青春物語がホームカミングパーティに向かっていくのに対してスパイダーマンとしての物語は別の場所でのバルチャーとの最終対決に進んでいくので、それがどちらもタイトル通りホームカミングパーティに集約されていけば青春アメコミ映画として綺麗に着地したのになー、とは思った。あとアクションシーンの見せ方は何をやっているのかイマイチ分からない所があったり、ラモーンズに合わせてポップなイラストが流れるエンディングが、この映画楽しいでしょ〜とポップで楽しいムードを強要されているみたいでちょっとイヤだったりもしたけど、子供連れで観ても楽しめるクオリティは流石のマーベル作品だったし全体を通して凄く面白かった。
映画『スパイダーマン:ホームカミング』予告① - YouTube