yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

エル ELLE (2016・仏)

   ゲーム会社を経営するミシェル(イザベル・ユペール)は自宅に侵入してきた覆面の男に暴行を受ける。しかしミシェルはその後もプライベートでは放蕩息子のヴァンサン(ジョナ・ブロケ)へ恋人ジョジー(アリス・イザーズ)との関係に注文をつけたり、会社では敵意を持った社員たちの意見をねじ伏せたりといつも通りの日常を続けていた。そして別れた夫のリシャール(シャルル・ベルリング)、親友でビジネスパートナーのアンナ(アンヌ・コンシニ)、その夫ロベール(クリスチャン・ベルケル)たちとの食事の席で暴行を受けたことを淡々と報告しつつ、ミシェルは部下たちも含めて暴行犯探しを開始する。そんな中、ミシェルは隣人で敬虔なクリスチャンの妻(ヴィルジニー・エフィラ)を持つパトリック(ロラン・ラフィット)に惹かれていくのだったが…。
監督:ポール・ヴァーホーヴェン、脚本:デヴィッド・バーク、原作:フィリップ・ディジャン、音楽:アン・ダッドリー、撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ。

 

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   誰もが一皮剥いたら醜悪だという人間観を貫きつつもそれを糾弾するので無く妙に格調高い画面の中で達観して描き、それをサスペンスへと昇華して洗練されたバーホーベン映画になっていた。

 

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   主人公のイザベル・ユペールは颯爽とした格好良さはあるのだが64歳とは思えない人間離れした容姿と相まって安易な共感を寄せ付けない存在感。バーホーベン映画なのにシャブロルの上質なフランス産サスペンスのような格調高さがあったのは彼女の存在に依るところも大きかった。

 

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   悪いことしたやつが悪い、被害者が善人、などという単純化した図式ではなく、ひたすら人間の多面性や、狂気との紙一重、というより誰もが狂気を内包していて、その発現が紙一重だという視点からの人物への距離感が絶妙で、他者を躊躇なく利用し親友への裏切りにも悪びれない主人公をそれでも魅力的に描けているのも凄かった。

 

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   そして登場人物全員が戯画的であるのにリアルで生々しく、なかでも隣人の奥さんは怖過ぎて、ほとんどホラー映画。それでも風情と余韻を残す格調高さで、バーホーベンの暴力性(下品さ?)がフランスの洗練に程よく中和されてちょうどいいバランスに着地した傑作だった。

 

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映画『エル ELLE』WEB限定予告編 - YouTube

 

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