建築家に憧れる技師にして連続殺人鬼のジャック(マット・ディロン)はヴァージ(ブルーノ・ガンツ)という謎の男に自身の殺人遍歴について語り始める。
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー、原案:イェンレ・ハロン、ラース・フォン・トリアー、製作:ルイーズ・ヴェス、撮影監督:マヌエル・アルベルト・クラロ、編集:モリー・マレーネ・ステンスガード。
トリアーの面白さは性格の悪さじゃなくて映像の新鮮さだったのに今作でも初期のような幻想的でカッコいいシーンは登場しなかった。というよりもむしろ非現実的場面が安っぽくて、もういい加減観なくてもいいかなという気分になったが、つまらない訳でもないので困る、という感じ。
道徳観念優先の映画界のモラルを試すような露悪的な表現を芸術至上主義に重ねて物申す的態度は、徒手空拳の若手お笑い芸人が常識に反することを言うと笑えるが、大物になってもそれやってると単なる威圧にしかならないのと同様に、かつてのトリアーがやるのならパンク的アティチュードと感じるだろうけど、すでに大物感のあるトリアーがやっちゃうと醜悪に感じる。
それでも映像としての面白さが堪能出来ればアリなんだが、終盤の地獄巡りのイメージは冗談なのかな、という紋切り型で、実際ふざけてる可能性も高いんだが、やっぱり物足りない。しかし俳優陣はマット・ディロンの怪演をはじめ、ユマ・サーマンやライリー・キーオも良かった。で、ストーリーテリングの妙や適度なユーモアもあるものだから、それなりに面白く観られてしまうというところが評価に困るところだな。
『ハウス・ジャック・ビルト』予告編 6/14(金)公開 - YouTube