現代日本を舞台にしたホラー『魔性の子』の裏設定として存在した異世界の物語を、異世界側から語り直すことによって物語世界の表裏を逆転させてこちらを表側とするシリーズへ変換させた作品で、それがその後も続く長寿シリーズになっていったという文脈だけでも面白い。
対の作品と矛盾しないように細かな設定やエピソードに無理矢理感が出てるところもあるけれど、そこも逆にそうやってここのパズル埋めてきたか、という面白味になっていた。
シリーズの物語としても前エピソードで主人公の陽子が読み手とともに右も左も不明な世界に放り込まれたままに冒険していったのと違い、『十二国記』世界の有り様がより掘り下げられていて、今後のシリーズの先鞭として期待感を煽ってくれる作品でもあった。