yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

海辺の映画館 キネマの玉手箱 (2019年・日)

 尾道の海辺にある小さな映画館、「瀬戸内キネマ」の最後のオールナイト興行「日本の戦争映画大特集」を見ていた鞠男(厚木拓郎)、鳳介(細山田隆人)、茂(細田善彦)の3人の若者は、劇場を襲った稲妻の閃光に包まれてスクリーンの世界へと入り込み、近代の戦争の歴史を体験していくのだが…。

監督、脚本、撮影台本:大林宣彦、脚本:内藤忠司、小中和哉、音楽:山下康介、撮影、編集:三本木久城、VFXアーティスト:塚元陽大、美術監督:竹内公一。

 

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 大林宣彦の面白味もイヤな部分も特濃で抽出しつつ衝動と計算を自在に往来し、俳優陣も含めて自身のフィルモグラフィを総括するような内容の作品にまとめ上げた怪作で、これが遺作というのはとにかく凄かった。面白いかどうかはともかく。ちょっと言いたいことがほとばしりすぎて、説教臭くもあったので…。

 

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 反戦をテーマに掲げることは至極真っ当だし、当たり前の正論を唱えることが揶揄されがちな最近の傾向においてはより一層意義があるとは思うものの、今回のような作品を観ている客層のほとんどはそのメッセージに対してもとより共感を持っているだろうし、そうでない客がこの映画の真っ直ぐなメッセージを受け止めることなんてあるのかな、とも思ったり。だからこそ年齢を感じさせないあの手この手の突飛かつフレッシュな演出の畳み掛けで映画として惹きつけようとしている部分もあるんだろうけど、結局そういうのも昔からのファンを喜ばしているだけのような気もするし。などと映画でメッセージを伝えることについても色々考えさせられたりもして、やっぱり面白いか。

 

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https://youtu.be/Dz_GcqrHTi0

 

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ラストレター (2020年・日)

 姉・未咲が亡くなったことを知らせるつもりで赴いた姉の同窓会会場で裕里(松たか子)は初恋の相手、鏡史郎(福山雅治)と再会する。成り行きで自分を美咲と勘違いされた裕里は誤解を解かないまま、彼に手紙を送り始める。一方、鏡史郎の返信は未咲宛で実家に届き、開封した未咲の娘・鮎美(広瀬すず)と裕里の娘、颯香(森七菜)は未咲に成りすまして返信を送る。奇妙な誤解から始まった不思議な手紙のやりとりの中で、高校時代の未咲(広瀬すず)と鏡史郎(神木隆之介)の淡い恋の思い出が辿られていく。

監督・原作・脚本・編集:岩井俊二、撮影監督:神戸千木、音楽:小林武史

 

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 いい話風に見える側面は狂気の断面図で、殆ど意味がないとしか思えない物語が一見美しく感動的な映画になっている岩井ワールド、もうなんか凄い。とりあえず漫画家役の庵野秀明が描いてる絵が鶴田謙二でオタクとしては掴まされたりもする。ピュアさと計算高さが同居し、青春時代に囚われた中年の狂気が垣間見えるところはいつも通りながら面白い。『ラブレター』のふたり(トヨエツ&ミポリン)のやさぐれ具合や広瀬すずの顔など役者を見るのも楽しかった。

 

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https://youtu.be/EvkzNshmjCA

 

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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン (2020年・日)

 戦うことしか知らなかった少女ヴァイオレット・エヴァーガーデン石川由依)は戦争終結後、手紙の代筆を行う「自動手記人形」として元軍人のホッジンズ(子安武人)の経営するC.H郵便社で働いていた。戦いで負った心の傷も少しずつ癒えてきたヴァイオレットだったが、彼女の心から戦場で誰よりも大切に思っていたギルベルト少佐(浪川大輔)の面影が消えることはなかった。そんなある日、ユリス(水橋かおり)という少年から代筆依頼が入り、時を同じくして郵便社の倉庫で宛先不明の手紙が見つかり…。

監督:石立太一、原作:暁佳奈、脚本:吉田玲子、世界観考証:鈴木貴昭、キャラクターデザイン、総作画監督:高瀬亜貴子、音楽:Evan Call、アニメーション制作:京都アニメーション

 

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 公開記念舞台挨拶ライブビューイング付きで観たので石立監督のコメントきいてたら泣けた。あまりにも不幸な事件に見舞われた後の作品であったことを念頭から外すことはやはり無理だが、それでも作品単体として作画のクオリティも世界観の構築も相変わらずハイレベルで、現実の諸々と関係なく感動的な映画だった。

 

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 物語に関しては、ヴァイオレットは職業をもった自立した人間として過去の亡霊と決別し、逞しく生きるという選択をしてくれたら痛快だったとは思うのだが、テレビシリーズから前作の劇場版外伝で描いてきた物語世界の緩やかな文化の変遷の中でのリアリティのある着地点として、今作のような流れがあったのかな、とは思ったし、その中で、依存した関係から対等に共立した関係へ変化をさせて、ヴァイオレットのみならず、ギルベルトをも救済するプロットを組み立ててあるのは、この作品の終幕として相応の展開だとも感じた。

 

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『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本予告第2弾 2020年9月18日(金)公開 - YouTube

 

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ミッドサマー(2019年・米)

 家族を不幸な形で失い、自身も精神疾患に苦しむ大学生ダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンの奥地で開催される夏至祭に参加する。太陽が沈まぬその村で行われる「90年に一度の祝祭」に村は幸福な空気に包まれていたが、その祭は残酷な儀式に彩られた奇祭であった…。

監督・脚本:アリ・アスター、撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ、プロダクションデザイン:ヘンリック・スヴェンソン、編集:ルシアン・ジョンストン、衣装デザイン:アンドレア・フレッシュ、音楽:ボビー・クルリック。

  

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 『ヘレディタリー』で諸星大二郎を感じたのは間違いなかった。今作でも奇祭という舞台はもちろん、世界が反転して異界へ入っていく様などは諸星ワールド的で、この監督、諸星漫画読んでるんじゃないかと思った。もしくは感性が近いか。

 

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 で、この映画、奇祭系ホラーとして突出した出来とは思わなかったけど、幕切れの高揚感が『ヘレディタリー』以上に感覚がズレていて、つまり、通常のハッピーエンドの感覚ではない部分で主人公が充足していくところに物語の到達点が設定されていて、この監督ちょっとヤバいんじゃないかという、そこが一番ホラーだった。

 

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『ミッドサマー』本国ティザー予告(日本語字幕付き)|2020年2月公開 - YouTube

 

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パラサイト 半地下の家族 (2019年・韓)

 家族全員が失業中で、その日暮らしの底辺生活を送る夫のキム・ギテク(ソン・ガンホ)、妻のチュンスク(チャン・ヘジン)、長男ギウ(チェ・ウシク)、長女ギジョン(パク・ソダム)のキム一家。しかしギウがIT企業のCEOパク氏(イ・ソンギュン)の娘(チョン・ジソ)の家庭教師としてその豪邸に入り込んだのを契機に、キム一家は運転手や家政婦として、身分を巧みに偽りながら、自分たちと正反対のパク家の内部へと入り込んでいくのだが…。

監督・脚本:ポン・ジュノ、プロダクションデザイナー:イ・ハジュン、衣装:チェ・セヨン、撮影:ホン・ギョンピョ、音楽:チョン・ジェイル。

 

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 貧困や格差社会などの今日的テーマを、恐怖とユーモアに悲哀のスパイスを絶妙にまぶした洗練されたエンターテイメントとして描いていて面白かった。役者もいい。花郎の人(パク・ソジュン)も良かった。寄生という概念を物理的にパク家に寄生していくキム家と、社会的弱者に寄生するように成り立っているパク家、どちらにも当てはまるように描いているのも上手い。物足りないとすれば、綺麗で上手過ぎなところぐらいか。

 

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 で、この映画で一番怖かったのは、社会的底辺にいても、それでもわずかな希望を持って、先の見通しを立てていたソン・ガンホパパが、ついに希望を無くして、『最高の計画は計画を立てないことだ』と達観したかのように息子に語るところ。計画を持たない、計画を持てない、夢や希望、人生の設計図を用意出来ないということが、自暴自棄や、従うべきモラルの喪失を迎える始まりであることを明確に描いていて、現実の社会における諸々の負の側面を集約して感じさせる凄い場面だったよ。

 

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第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編 - YouTube

 

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テリー・ギリアムのドン・キホーテ (2018年・スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル)

 撮影に行き詰まった若手CM監督のトビー(アダム・ドライバー)はスペインの田舎町での撮影中、謎めいた男から自身が学生時代に監督した「ドン・キホーテを殺した男」 のDVDを渡される。かつての情熱に溢れていた自身を追う様に、その作品の舞台となった村を訪れるトビーだったが、そこで待っていたのは未だ役から抜けきれず、自分を本物のドン・キホーテだと信じ込む靴職人の老人ハビエル(ジョナサン・プライス)だった。そしてハビエルにドン・キホーテの忠実な従者サンチョだと思い込まれたトビーは、現実と夢の入り混じった冒険の旅に無理やり連れ出されるのたった。

監督、脚本:テリー・ギリアム、脚本:トニー・グリゾーニ、撮影:コニラ・ペコリーニ、美術:ベンジャミン・フェルナンデス、編集:レスリー・ウォーカー、音楽:ロケ・パニョス。

 

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 ギリアムは大好きだけど、リアルタイムで劇場で観て『ブラジル』や『バンデッドQ』みたいな興奮を味わったことはないので、『ドン・キホーテ』も実は未完成のままで妄想上の傑作にしておいてくれても良かった気もするんだけど公開されてしまったから観に行った。

 

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 内容は意外とまともだった。ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』でも描かれていたように、そもそもジャン・ロシュフォールジョニー・デップを出演者として製作が始まっていたのは有名な話だけど、その時点から今回のように『映画作り』と『ドン・キホーテ』をがっつり重ねて描くつもりだったのか、それとも制作の紆余曲折が物語に影響を与えてそうなったのか。どちらにせよメタ的な構造になりそうなところを、結局は割合に正道な物語に収斂させていて、そこが観やすくもあり物足りなくもあった。そこがギリアムっぽいところとも言えるんだけど。

 

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映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』特別版予告編+映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』予告編 - YouTube

 

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ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 (2019年・米)

 世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体となって発見された。ハーランの孫ランサム(クリス・エバンス)、長女リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)、その夫リチャード(ドン・ジョンソン)、次男ウォルター(マイケル・シャノン)、義理の娘ジョニ(トニ・コレット)、専属看護師のマルタ(アナ・デ・アルマス)ら屋敷にいた全員が事件の第一容疑者となる。依頼を受けた名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、裕福な家族の裏側に利害様々な人間関係が潜んでいたことを暴いていく。

監督、脚本:ライアン・ジョンソン、撮影:スティーヴ・イェドリン、音楽:ネイサン・ジョンソン。

 

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 イメージとしての古き良き探偵物の風合いに現代的なメッセージを織り込んだ佳作で、原作あるんだろうなあと思って観ていたが、監督のオリジナル脚本だったので驚き。張り付いたイメージから自由になった役者陣も楽しそうでほっこりした。

 

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ダニエル・クレイグ&クリス・エヴァンスら出演!映画『ナイブズ・アウト(原題) / Knives Out』海外版予告編 - YouTube

 

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