竹宮惠子との訣別などシビアな内容も含まれていたが、上品さと素っ頓狂な可愛らしさの中にクリエイターとしての我の強さが垣間見える語り口調の文体に萩尾望都の漫画世界と同様のムードが感じられて心地良く読めた。本人は大泉時代をトキワ荘になぞらえられる事に怒り気味の否定をしていたし、これで当時の出来事を掘り返す作業を終わりにさせたいとも語っていたが、しかし本作はもう一つの『マンガ道』としてすこぶる面白いし、天才たちの伝説により一層興味を抱かせる内容だと思った。そして何よりあれだけ繊細な作品を描いておきながら、相手の心の機微をあまり感じ取れない萩尾望都の天才キャラぶりが一番興味深かった。
見える子ちゃん 5 / 泉 朝樹
霊を無理矢理に無視してやり過ごすという初期設定だけではパターンが尽きるというのもあるだろうけど、段々とストーリー的側面が強くなってきた。そうなるとギャグ的要素は薄まり、単にホラー化していくことになるところだけど、未だギリギリのバランスを保っていて、その分、先の展開が読めなくてハラハラする。もうここまできたらストーリーに特化しても面白くは読めるだろうけど、現状のどっちつかずの状態がこの作品独特の面白味なので、この絶妙なバランスを維持して欲しいというのを勝手に期待。
蜜蜂と遠雷(幻冬社) / 恩田 陸
ピアノに燃えていた娘に読ませようと思って買っていたものの(未だに燃えてる)、先に映画版を観たのもあって長らく積んでいたが、ようやく読んだ。で、やっぱり恩田陸は面白かった。ピアノコンクールを舞台にして、バトルマンガさながらに、初回より2回目、2回目より3回目と〈素晴らしい演奏〉がエスカレートしていく様を、演奏者の心理や聴き手側の感情描写を総動員して、ちゃんと音楽の凄みが上昇していく文章で表現されていたので、読んでいて音楽そのものに説得力を感じたし、何より燃えた。で、映画版で不要に感じた心理イメージのしつこいインサートや本選に登場するあくの強い指揮者(鹿賀丈史)のキャラクターも、こちらの原作小説では物語の流れを阻害しないスマートな描写になっていて、だよねー、と勝手に納得したのだった。
女子高生の無駄づかい (9) (角川コミックス・エース) / ビーノ
バカの破壊力が落ちてるのが気になるが、ヤマイのワイ活(無料Wi-Fi探し)の話か面白かったので大丈夫。あと今巻も表紙良かった。
ヴァンピアーズ (1〜5) (サンデーGXコミックス) / アキリ
絵が綺麗なので、それだけで全然楽しく読めるし、ややホラーでイチャ百合でアクションもあるものの全体的には緩く進行していくのも心地いい。この綺麗でまったりした世界にずっと浸りたくなってしまうので、物語の方向性によっては、いつでもシリアスな展開に行けちゃうところが一番サスペンスを感じるところだったりする。