yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

書籍

流 (講談社文庫) / 東山彰良

青春小説としても台湾の一時代を切り取ったドキュメントとしても面白かったが、何より主人公の見る景色や経験がまるで作者の実体験のようなリアリティで迫ってきて、そこに幻想的な光景が違和感なく入り込んでくる様が小説を読む醍醐味を存分に味あわせてく…

高い城の男(ハヤカワ・SF・シリーズ) /フィリップ・K.ディック 著、浅倉久志 訳

ディックの代表作のひとつというのに初めてちゃんと読んだ。本物と紛い物というモチーフが作中のアイテムのみならず物語世界の存在自体にも仕掛けてあって、全編をリアルの不確かさが覆い尽くす感覚がハードボイルドな雰囲気と併せていかにもディック的で、…

フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉(講談社) / 神林 長平

いつも通りに言葉と世界を題材として扱いつつもアニメ化されてもおかしくなさそうなキャラクター(ニートの中年だけど)が登場して軽妙な掛け合いが楽しめる作りは久しぶり。当然面白かった。キャラも立ってるし、サブタイトル(?)に〈倭篇〉と謳ってて、『…

冷血(上・下) (新潮文庫) / 髙村 薫

被害者と加害者の運命の交差路までの道程が綿密に描かれ、何気ないエピソードが物語としての事件の伏線となり、そうして発生した事件に現実の凄惨な事件を目の当たりにした時と同様の感情に襲われ、というところまでで犯罪小説として存分に面白いのだけど、…

安達としまむら9 (電撃文庫) / 入間 人間

『安達としまむら』というよりは『日野と永藤』という方がしっくりくる、番外編的な一冊だった。物語としては前巻で決着済みということもあり、ここまで来るとサブキャラクターたちを色々と掘り下げてくれるのもファンサービスとしては嬉しくはあるけど、個…

安達としまむら8 (電撃文庫) / 入間 人間

最終巻というわけでもないのにエピローグというか作品世界の後日譚も見せてくれて、それは今後安心して都度都度のエピソードを楽しめる有難いサービスだった。(『グインサーガ』で悶々とさせられた身としては特に…)。で、修学旅行でのアレコレは、しまむら…

安達としまむら7 (電撃文庫) / 入間 人間

ゆるふわでイチャイチャしてるラブコメ(百合)小説の王道みたいな展開だけど、ここに至るまでの積み重ねと紆余曲折があるので、楽しさはひとしお。ヤヒロの存在も、箸休め的な効果だけでなく、安達としまむらの狭い世界の視野を時折り拡げて見せてくれてて…

安達としまむら6 (電撃文庫) / 入間 人間

このまま2人の関係性はそのままに物語が続くと思っていたので、ちょっと意外な展開だった。物理的な距離は近づきつつも精神的距離は平行線を辿るのかなと思ってたが、しまむらの実家で飼っている老犬と安達をオーバーラップさせて、しまむらの安達への感情を…

安達としまむら5 (電撃文庫) / 入間 人間

今作での安達の独占欲と依存ぶりの暴発はかなり病的で、軽くて楽しい物語はほとんど崩壊寸前、しかもその感情の発露を冷徹に受け流して否定するしまむらとの温度差は最高に広がっていく。それでも重くなりすぎることはないし、2人の関係性の行方も気になって…

安達としまむら4 (電撃文庫) / 入間 人間

誰かとの距離が近づくと同時に他の誰かとの関係性が簡単に解消したりする学校という狭い世界の中での人間関係のいびつさ、奇妙さを巧みにサラッと描きながら、そんな中でしまむらだけを眼中に据えて猛進する安達と、それを見守る達観したしまむらの温度差が…

安達としまむら3 (電撃文庫) / 入間 人間

しまむらと幼馴染の樽見とのエピソードで、どこにでもある『友達』との関係性を残酷なぐらいドライに描いたり、しまむらのキャラクターのゆるふわな外面と内面の虚無ぶりがほとんどホラーかというぐらいだったりするのに、それでもやっぱり軽快なラブコメと…

安達としまむら2 (電撃文庫) / 入間 人間

この巻辺りからだんだんと安達がちょっと不安定で挙動不審な今のキャラクターになってくる。で、しまむらと安達が交互に語り手となって物語が進行することで、2人のズレ具合が漫才的な面白さにもなっているんだけど、そんなまったりとした青春モノのような面…

安達としまむら (電撃文庫) / 入間 人間

全巻読んだ後で思い返して書いてるからなんだけど、最初は安達もしまむらもキャラが定まってなかったのか、計算通りなのか随分雰囲気が違う。しかし青春小説そのものの細かな感情の機微と、本筋から外れたようなヤシロというSF的存在の共存で、シリーズが持…

世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌 / 「文學界」編集部

放置していて読み終わったのがヴェネチア受賞後というのがアレだが、それは偶然。で、内容はほとんどが対談を含めた本人の語りやインタビューで構成されていて嬉しいし、長谷川和彦とのエピソードなど特に面白かった。なかでも監督本人が自身の作品のバラン…

エンニオ・モリコーネ、自身を語る (河出書房新社)/エンニオ・モリコーネ、アントニオ・モンダ 著、中山 エツコ 翻訳

聞き手の作家とモリコーネとの数度に渡る対話形式で、話題もその都度大雑把に選択されているので、年代ごとにじっくりとモリコーネの足跡を辿るようなものではなく、ざっくりしたインタビュー本といった感じで読み物としては物足りない。しかし温和な語り口…

BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか(柏書房)/キム・ヨンデ 著 、桑畑 優香 訳

なぜ世界的に成功したのかについての考察とディスコグラフィーのレビューで構成された防弾本。BTSは世界的成功の割にキャラクター以外の部分に言及されることが少ないから新鮮ではあるが、やはりアーティスト本はバイオ本や本人たちの言葉が主体のもののほう…

宿借りの星 (創元日本SF叢書) / 酉島 伝法

現実とは全く異質に思える作品世界を構築して、その世界で大叙事詩を紡ぐ圧巻の小説だった。前半は独特の用語と世界観に難儀する部分もあるが(しかし、作者自身によって挿入された流麗なイラストレーションが想像力を多分に補ってくれる)、祖国を追放され…

先をゆくもの達 / 神林 長平

舞台は神林作品のホームとも言える火星。スケールやSF的仕掛けは壮大だが、真意の不確かな会話のやり取りで物語が進行していく。なのでストーリーやガジェットの面白さよりも形而上学的考察の方に比重が置かれていて、『敵は海賊』シリーズに代表される、ス…

星新一 ―一〇〇一話をつくった人 (上下巻)(新潮文庫) / 最相 葉月

どのショートショートを読んでも星新一的だと感じさせるオリジナリティを持つ作品群に比べて、星新一自身に対するイメージは、筒井康隆の日記やエッセイに登場する人物像で輪郭を描いていたぐらい(それでも小松左京らの濃さに比べると圧倒的に印象が薄い)…

昏き目の暗殺者 上・下 (ハヤカワepi文庫) / マーガレット・アトウッド著、鴻巣 友季子訳

昏き目の暗殺者 上・下 (ハヤカワepi文庫) / マーガレット・アトウッド著、鴻巣 友季子訳 物語進行とは異なる階層のミステリとして機能させる語り手の曖昧さや、年代記、恋愛物、B級SFといった複数のジャンル小説として楽しめる入れ子状の構成など、重層的…

丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫) / 小野 不由美 著

本編では日の当たらない末端の役人たちの仕事ぶりを描く短編集。シリーズのディテールをより深める意味合いを感じつつ個人的には初めて物語に乗れなかった。例えば死刑制度を考察する『落照の獄』など、このシリーズでは現実世界の諸問題も俎上にあげて語れ…

風の万里 黎明の空 (上・下) 十二国記 4 (新潮文庫) / 小野 不由美

前作でファンタジーというよりは架空歴史物のような普遍的な物語にシフトした印象を受けたんだけど、かなりの長編の今作はさらに王道娯楽小説になっていて、遠山の金さん的なカタルシスと王様が在野で仲間を集めるという直球な展開が楽しい大作だった。 それ…

東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫) / 小野 不由美

前作まででいいところ全部持っていっていた延王と延麒が主役ということもあって、敵味方がわりとハッキリとしたオーソドックスに進行する物語で、キャラクター物としてもシリーズが展開していくのかな、という印象。こちらもすでに世界観と登場人物に愛着湧…

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫) / 小野 不由美

現代日本を舞台にしたホラー『魔性の子』の裏設定として存在した異世界の物語を、異世界側から語り直すことによって物語世界の表裏を逆転させてこちらを表側とするシリーズへ変換させた作品で、それがその後も続く長寿シリーズになっていったという文脈だけ…

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫) / 小野 不由美

どうしようもなく切実に相手を必要としているのに、その相手からは相応には必要とされないという、魔性の子・高里と教育実習生・広瀬という主人公ふたりの残酷だが普遍的な友情物、というより恋愛物として面白かった。同時にその関係性がファンタジーに耽溺…

月の影 影の海 (上・下) 十二国記 1 (新潮文庫) / 小野 不由美

隅々までに構築された「異世界」のオリジナリティと存在感で現実におけるそれとは別次元のリアリティを楽しめて面白かった。当時のラノベ界に異世界転生物というジャンルが確立されていたかどうかは知らないけど、もし今作がその先鞭をつけていたとしても、…

やがて君になる画集 アストロラーベ / 仲谷 鳰

やっとひと通り鑑賞。『やがて君になる』の世界に再没入出来るし、とにかく美麗で装丁も良かった。連載ページのカラー再録もあって、流石分かっている!という構成も嬉しい。クリアな質感と手書きのような繊細な線がどちらもフルデジタル環境で描かれている…

響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編 (宝島社文庫) / 武田 綾乃

主人公・梓の一見すると非の打ちどころのない性格こそを彼女の欠損として露にして、周辺キャラクターも含めてより個々の感情の機微に焦点を当てた湿度の高さで人間関係のエグいところまで掘り下げていき、シリーズ本編よりも青春の暗部を描くということをや…

響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編 (宝島社文庫) / 武田 綾乃

努力家で、その努力に見合った実力と、それを嫌味にしない円滑なコミュニケーション能力を備えた、通常の青春小説であれば主人公として成立し難いキャラクターを中心に据えるというシリーズのスピンオフだからこそ可能な設定を駆使しつつ、その周辺の人物像…

響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話 (宝島社文庫) / 武田 綾乃

短編ならではの他愛のない、しかし各キャラクターに焦点を当てたエピソードの連なりで、群像劇としての本編のディテールをより深めてくれるファンとしては嬉しい作りの短編集。久美子と塚本の進展具合など重要な展開も含んでいるので単なるファンサービスい…