yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

オオカミは嘘をつく

     アハロン・ケシャレス、ナボット・パプシャド監督のイスラエル製のサスペンス映画。タランティーノが昨年のベストと宣ったとチラシに書いてあった。変態的手口の少女誘拐殺人事件を巡って、容疑者で物静かな教師ドロール(ロテム・ケイナン)、暴力もいとわずにドロールに自白を強要する刑事ミッキ(リオール・アシュケナズィ)、被害少女の父親で、常軌を逸した復讐者ギディ(ツァヒ・グラッド)という三人の男の攻防で物語が展開する。


     とりあえずオープニングは滅茶苦茶カッコよかった。少女がかくれんぼを始めてから誘拐されるまでを、不穏で緊張感を煽るストリングスの響きと凝った色彩、カメラワークで追いかけ、これは全盛期デ・パルマばりの格調高いサスペンスを見せてくれるのではないか、と気持ちが高揚した。

     しかし実はそういう映画ではなくて、中盤からはシチュエーション限定ホラーのようなムード。エキセントリックな登場人物に露悪的な描写でイーライ・ロスの映画みたい。やり過ぎの暴力描写がブラックコメディ気味に暴走したりする面白さなんだろうが、子供が殺されている話でそれをやられても個人的には居心地の悪さだけが残る。加えてその暴力を、オチの効果で観客に納得させる仕掛けがあるので余計にタチが悪い。
    自分が親になってからは特に、子供が死んでしまったり殺されることを物語で描くなら、相応の意味か無意味を提示してほしいと思っているのだが、深読みすれば登場人物たちが全て欲と暴力にまみれていることがイスラエルの状況の写し鏡で、そこで犠牲となるのは常に子供達弱者だという表現だったと思えば、まあ許せる、かなあ。

     全体としてはオープニングで盛り上がったぶん肩透かし感大アリだったが、B級ホラーと思えば悪くない。あとミステリの要素は邦題で既に台無しだが、元より犯人探しは二の次という作りなので、そこはいいのか。何にせよタランティーノの大絶賛はいつも通り安定の大袈裟ぶりという感じだ。


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