天才的ハッキング技能を持つ学生ニック(ブレントン・スウェイツ)は両足に障害を負い、恋人ヘイリー(オリビア、クック)も引越しにより彼の元を一時離れる事になるなど人生の転機を迎えていた。そんな中ヘイリーの引越しを親友ジョナスとともに手伝う旅に出たニックだったが、以前から彼やジョナスの周辺にハッキングを仕掛けてきていた謎のハッカー・ノーマッドからネット上で挑発を仕掛けられた
大学のパソコンにハッキングを仕掛けてきたハッカーの居場所を突き止めるため、友人のジョナスやガールフレンドのヘイリーとともにネバダを訪れる。しかし、そこで何者かに拉致されてしまい、気が付くと政府の隔離施設に監禁されていた。職員の説明によれば「何か」に接触して感染したため隔離されているという。どうにかして施設を出ようと試みたニックは、ある思いがけない力が発動する。ウィリアム・ユーバンク監督作品。
青春物、エイリアン遭遇物、監禁スリラー、ヒーロー物、鉄男、とにかく雑多な趣味の世界をぶち込んでごった煮にした珍品SF。描写もデストピアSF風から主観映像ホラーまで何でもアリで、もし今作がもっと大規模な大作だったら酷いの一言で片付けたくなったかも知れないが、全体に手作り感溢れる作りが作品を愛らしいものに感じさせてくれた。
かなり突拍子もない展開それ自体が作品の面白味なので中身のことを書くこと=ネタバレなので多分以下はネタがバレる話。
まず設定や物語自体は整合性など皆無。ラストの、世界はこんなのでした、というオチに顕著なように、見た目やその場面を構成する要素を見せつけることが優先で、そこに意味を見出そうとさせるような映画ではない。だからこその珍品的印象なのだが、しかしその場面場面の見せ方は面白いものを提示してやろうという意気込みが感じられるし、実際楽しかった。特にエイリアン(?)と融合して超人パワーを発揮する場面は眼鏡男子ジョナスのスーパーマン化や主人公ニックの超速移動などアメコミヒーローから鉄男までを参考にしたような描写が炸裂だし、無機質な施設に監禁されるシークエンスでは『THX1138』や『ソラリス』を彷彿とさせる乾いたSF風景を堪能出来る。
エイリアンに誘拐(?)される辺りは主観映像物ホラーになっていて、そこまでを恋、友情、挫折の青春ドラマというムードで見せて来ているだけに不条理な世界への突入口としてはなかなか効果的だった。
あと全編デタラメなぐらい節操の無い要素で構成しているが、ニックを突き動かすのは全て恋人ヘイリーへの想いと自らの挫折にまつわる劣等感・反発になっていて、つまり冒頭からの青春描写はちゃんと最後まで本筋として立ってはいるので、映画の全てがニックの感情のメタファーとして捉えられなくもないという意味では一本筋が通っているとも思える。
あとは顔のデカさでローレンス・フィッシュバーンの無表情演技が冴えていたり、親友ジョナスの見せ場の、文字通り熱い友情の爆発シーンがあったりで、楽しさとサービスは盛り沢山だった。