主要人物3人のキャラクターと関係性で貧困やメディアの病理、現代的な組織の成り立ちなど多層的なテーマを見せつつサスペンスフルなエンターテインメントに仕立てた語り口は上手いが、終わってみると確かに今ってこういう状況だよね、とは思うもののそれ以上のものはないという映画ではある。しかし単純にサイコパス観察ホラーと割り切って観れば面白かった。
全篇警察24時風のハイテンションなドキュメンタリータッチで進行していき、俳優たちの熱演もあって観ている間は引き込まれたが、ジェイク・ギレンホールの髪を束ねる小芝居や、カメラマンとして一線を越える場面でカメラを奉るかのように高く掲げた姿の象徴的な使い方など、ちょっとわざとらしくて鼻につく部分もあった。
ジェイク・ギレンホール演ずる主人公ルーはどこか『タクシードライバー』のトラヴィスの現代版を思わせる部分もあり、現代的悪党の立身出世伝という物語は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』的とも言える。しかしスコセッシ作品のように善悪を超越して映画としての普遍性まで獲得するということはなく、狂気だけをドキュメンタリー的に映し出したところが現代的であり本作の特色にも思えた。と同時に映画として物足りなさも感じる部分でもあったが。それにしてもジェイク・ギレンホールは確実に大物への階段を登っている感じがあるな〜。