観ているこちら側が案内役である白石晃士とともに狂人の内部へ寄り添い同化していく過程が怖すぎる。狂人の江野くんは超電波な人なので普通の作りでは全く共感出来る筈のない人間なのだけど、フェイクドキュメンタリーという形式によって白石晃士とともにズルズルと彼に同化されて行く。なのでもっともマトモな人間であるADの女性(東美伽)が、段々と理解のないウザい人間であるかのように感じられてしまう恐ろしさ。でもちゃんと最終的にはモラル的に罰を受けるという決着は着けてくれる。もっとも共犯者としての白石晃士は刑事的な罰のみを受けるだけで、わりとのうのうとしているのだが、これは逆に映画製作者の業の恐ろしさを見せているようにも感じられて、ホラーとして敢えてそうしているのか。
一番怖いのは狂人が犯行に至る理由にオカルト的なものが使われてはいるものの、あまりにリアルで現代的な〈格差によってこぼれ落ちてしまった人間の気分〉というのがより根本的な動機になっているところ。あと時々気を利かせたりする一方で、急に馴れ馴れしくなったりする江野くんのキャラクターが真に迫っているのと、演じる宇野祥平の顔も怖くてゾワゾワした。真面目な顔でニセインタビューに答える黒沢清も見どころだ。