恋人に別れを告げ同居中の家から荷物をまとめて車で飛び出したミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は、夜道で事故に遭って意識を失い、家屋の地下に造られたらしい見知らぬシェルターで目を覚ました。そこにはハワードと名乗る中年男(ジョン・グッドマン)がいて、彼女を事故から救いここへ連れてきたが、シェルターの外は汚染されており、外へ出す訳にはいかないと告げる。軟禁状態のミシェルはハワードの言動を疑うが、同じくシェルターで生活するエメット(ジョン・ギャラガー・Jr.)という青年は自身の意志でここへ避難してきたのだと言う。ミシェルはエメットを信用しつつも時折狂気を垣間見せるハワードへの不信を拭えぬまま共同生活を始めるのだが…。監督ダン・トラクテンバーグ、脚本ジョシュ・キャンベル、マット・ストゥーケン、デイミアン・チャゼル、撮影ジェフ・カッター、音楽ベアー・マクリアリー、製作J・J・エイブラムス、製作総指揮マット・リーブス。
プロット自体は飛び道具的に様々なジャンルを行き来しつつも、中身は小道具や言動でのこれ見よがしの伏線の張りと回収などに薄さを感じたが、全体としては楽しかった。変態サイコ親父の監禁もの、宇宙人襲来ものを掛け合わせて、SF、サスペンス、ホラーとジャンル映画の大盛りをやりつつ、ヒロインはタンクトップで凛々しく、ダクトにも突入するというリプリーオマージュでお腹いっぱいになった。
変態監禁親父も、ここだけがメインだと結構イヤな気分になるところだが、外にはもっとヤバイことがあるという前提があるので、わりと安心して観ていられる。緊張感ではマイナスかも知れないが、サクッと楽しく観られるという意味では個人的に丁度いい塩梅だった。それでもこの親父がジョン・グッドマンじゃなくてクリーピーの香川照之だったら気色悪過ぎてちょっと楽しくは観れないだろうけど。
それから、ヒロインが「お前が使えなかったチケットで、あたいが代わりにあのバスに乗ってやるよ!」と厚い(熱い)友情でテンションを高めるベタな展開は良かったし燃えた。あと冒頭、声だけで登場する別れ話を嫌がる彼氏がブラッドリー・クーパーだったのがエンドロールで分かり、アメリカンスナイパーでの虚ろな目が蘇ったので、最初から知っていたらそれも怖かっただろうなと思った。
映画『10 クローバーフィールド・レーン』予告編 - YouTube