とある都市。女優(パウリナ・ハプコ)が役を得る為に好色な映画監督(リチャード・ドーマー)のホテルを訪ね、女優の嫉妬深き夫(ヴォイチェフ・メツファルドフスキ)はその現場に乗り込もうとする。同じ頃、ホットドッグ屋(アンジェイ・ヒラ)は店仕舞いを始め、その息子(ダヴィド・オグロドニク)はバイク便の途中で不倫に耽り、少年(ウカシュ・シコラ)は強盗をしくじっていた。そんなありふれた夕方の都市の日常だが、不穏な兆候が表れていることに気付く者もいた…。監督・脚本:イエジー・スコリモフスキ、撮影:ミコワイ・ウェプコスキ、音楽:パヴェウ・ムィキェティン。
冒頭からスマホのカメラで撮影した映像などを使ったりして、年寄りが流行りに乗って失敗するパターンなのかと心配になったが、興味津々に新技術を駆使して面白い映像を作ってやろうという鼻息が聞こえてきそうな画面はダサい部分もありつつ新鮮な映像が多く、それを引き立てる音響も凄かった。特にジャンキーのバイク便男がラリっている描写と、そのままバイクで疾走する場面のスピード感、恐怖感の若々しさは驚異的だった。
物語はよく分からない、というより「世にも奇妙な物語」とかでやってそうな小話のノリだったけど、回収されない予感めいたものを散りばめることで一応、奥行きを与えているのは流石だった。色々あるけど最後は全部終わっちゃうんだよ、という意地悪な話というだけかも知れないが、映画が一点に収束していくものであることへのメタファーと深読み出来なくもなかったりして、楽しめた。