yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

パーソナル・ショッパー (2016・仏)

    三ヶ月前に双子の兄ルイスを亡くしたモウリーン(クリステン・スチュワート)。兄妹は互いに霊媒師でもあったので、もしも片方が先に死んでしまった時はあの世からサインを送るという約束を交わしていた。パリでセレブのために買い物を代行する「パーソナル・ショッパー」として女優のキーラ(ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン)のもとで働きながら、兄の恋人だったララ(シグリッド・ブアジズ)とともに残された住居を訪れるなど兄からのサインを探し続けるモウリーンだったが、同時にパーソナル・ショッパーとして扱う高額な衣服や装飾品を密かに身に付けるなど自身の欲望を抑えきれない状態に陥ってもいた。そんな中、携帯に彼女の心理と行動を見透かしたかのような不可解なメールが届き始め、モウリーンはそれを亡くなった兄からのサインではないかと考え始めるのだが…。

監督:オリヴィエ・アサイヤス、製作:シャルル・ジリベール、撮影:ヨリック・ル・ソー、美術:フランソワ=ルノー・ラバルテ、編集:マリオン・モニエ、衣装デザイン:ユルゲン・ドーリング。

 

f:id:yudutarou:20170626105306j:image


    シャネルが衣装協力をしていたりカルティエその他高級ブランドが劇中に登場するという前情報でお洒落映画だと思っていたら、冒頭から心霊描写やお化けそのものが出てきて、びっくりすると同時に嬉しくなったが、内容の方も高級ブランドに囲まれたセレブの世界と死者の魂を感じる世界、その双方を等価に描くことで主人公ともども物質/精神世界に引き裂かれ、混沌とさせられて、サスペンスが積み上げられいく奇妙な味わいがあって非常に楽しかった。

 

f:id:yudutarou:20170626105322j:image


    終盤、謎の男からのメールが畳み掛けるように鳴り続け、危険が迫る場面は、急に安っぽいサスペンス演出になっていて、それは差出人不明のメッセージに追い立てられる姿を不在の死者からのサインを待ち続ける姿と相似させることで物質的だろうが精神的だろうが依存しきってしまうことへの滑稽さを浮き彫りにしているように感じた。安手の表現と言えばホラー的な描写も同様で、心霊描写の場面ではわざわざジャンル映画的な演出、幽霊表現をやっていて、セレブ的な物質世界と同様に、形通りの精神世界の見え方というものを批判的に提示していたんじゃないかと思ったが、違うのだとしたら単にノリノリでやってただけかも知れないな…。

 

f:id:yudutarou:20170626105342j:image


    あとセレブの世界を見せたり双子という要素が入っていたりすることで、クローネンバーグ的なムードが漂っていたのも個人的にはポイント高かった。双子の物語としては主人公は禁忌に触れることにしか愛情を抱けない性癖になっていて、双子の兄への執着から考えると既に無くしてしまった者との奇妙で近親相姦的な物語とも捉えることが出来たりして、多層的な味わいを作品にもたらしているように感じた。

 

f:id:yudutarou:20170626105358j:image

 

    クリステン・スチュワートの演技は初めてちゃんと観たけど、ブランドで着飾らせたくなるスタイリッシュな存在感とサスペンス映画のヒロインとしての不安定さを秘めた立ち振る舞いが素晴らしくて、彼女が画面にいることでシーンが「絵」として決まっている気持ち良さがあった。アサイヤス作品自体も初めて観たんだけど、予想と違うヘンな映画で良かった。やっぱりイメージで観ないのはいけんな、と改めて思い知らされた。

 

f:id:yudutarou:20170626105411j:image

 

『パーソナル・ショッパー』予告編 - YouTube

 

f:id:yudutarou:20170626104823j:image