どうしようもなく切実に相手を必要としているのに、その相手からは相応には必要とされないという、魔性の子・高里と教育実習生・広瀬という主人公ふたりの残酷だが普遍的な友情物、というより恋愛物として面白かった。同時にその関係性がファンタジーに耽溺する読者と物語世界の関係としても投影されていて、読者がいくら現実世界に疎外感や孤立を感じても、物語世界に住まうことは出来ないという残酷さが高里と広瀬のラストシーンで物語とシンクロして最高潮を迎える様がとても切ない。そして、だからこそ読者は虚構作品を求め、愛するというファンタジー作品が存在する根源的な要因の一つを顕在化していて、ここをシリーズの起因とした『十二国記』は魅力的になる筈だと思った。