尾道の海辺にある小さな映画館、「瀬戸内キネマ」の最後のオールナイト興行「日本の戦争映画大特集」を見ていた鞠男(厚木拓郎)、鳳介(細山田隆人)、茂(細田善彦)の3人の若者は、劇場を襲った稲妻の閃光に包まれてスクリーンの世界へと入り込み、近代の戦争の歴史を体験していくのだが…。
監督、脚本、撮影台本:大林宣彦、脚本:内藤忠司、小中和哉、音楽:山下康介、撮影、編集:三本木久城、VFXアーティスト:塚元陽大、美術監督:竹内公一。
大林宣彦の面白味もイヤな部分も特濃で抽出しつつ衝動と計算を自在に往来し、俳優陣も含めて自身のフィルモグラフィを総括するような内容の作品にまとめ上げた怪作で、これが遺作というのはとにかく凄かった。面白いかどうかはともかく。ちょっと言いたいことがほとばしりすぎて、説教臭くもあったので…。
反戦をテーマに掲げることは至極真っ当だし、当たり前の正論を唱えることが揶揄されがちな最近の傾向においてはより一層意義があるとは思うものの、今回のような作品を観ている客層のほとんどはそのメッセージに対してもとより共感を持っているだろうし、そうでない客がこの映画の真っ直ぐなメッセージを受け止めることなんてあるのかな、とも思ったり。だからこそ年齢を感じさせないあの手この手の突飛かつフレッシュな演出の畳み掛けで映画として惹きつけようとしている部分もあるんだろうけど、結局そういうのも昔からのファンを喜ばしているだけのような気もするし。などと映画でメッセージを伝えることについても色々考えさせられたりもして、やっぱり面白いか。