久々に読書しながらヤバい、ヤバいよ〜と興奮。ローラン・トポールが誰なのか分かってなかったが、表題作の『幻の下宿人』を読んでいて、なんか知ってる話だと思ったらポランスキーの『テナント』の原作だった。というかトポールはヘルツォークの『ノスフェラトゥ』にも出演していたらしいし、『ファンタスティック・プラネット』の原画、製作もやっていて、あの作品に感じる魅力の源泉はルネ・ラルーというよりトポール由来だったのかも知れないとこの小説を読んで感じた。
『テナント』に漂う独特の幻想と狂気はこの原作で既に完成しているし、小説全体を覆う諧謔と不穏はさらにもう一編の『ジョコ、記念日を祝う』で爆発していて、中盤までの寓話的な展開の不穏さから殆どホラーと化す終盤まで全て面白い。ホラーシーンは永井豪のデビルマンの地獄絵図のようだし、イメージの暴走はシュヴァンクマイエルや初期の塚本晋也のようで、古今東西のシュールと暴力のトップランナーたちの作品を想起させる面白さ。社会的な作品のようにも読めるし単なる狂気の結晶としても楽しめる、とんでもない作品だった。