1970年代後半のイギリス、イギリス国民戦線を中心とする過激な排外主義運動が高る中、芸術家のレッド・ソーンダズら数人の若者たちが「ロック・アゲインスト・レイシズム」を発足し、ロックとデモで差別主義者に対抗した姿を振り返ったドキュメンタリー。
監督・脚本・編集:ルビカ・シャー、製作・脚本:エド・ギブス、製作総指揮:ポール・アシュトン、撮影:ズザンネ・ザラバティ、音楽:アイスリング・ブラウワー。
パンクムーブメント期の英国におけるヘイトクライムの状況が想像以上にシビアで驚きだったが、そこからこの映画で描かれる市民運動によっていくらかマシな状態に持ち直したことは、今の日本の空気に辟易した気分に少しは慰めになった、ような気もする。まあ、これはパンクというよりはデモや人々の意識の功績だとは思うし、そこに音楽の力が作用していたとしたら、それはそれでちょっと複雑な気分もあるのだけど。当然この社会で何をやるにも、やらないにしても、全ては政治と不可分で、音楽に政治を持ち込むな、などというそれこそ政治的な物言いは頭がおかしいと思うが、音楽の持つ一体感の快楽が全体主義の気持ち悪さと表裏一体であることは同時に意識しておきたいところです、というのは改めて思った。それはさておき、この映画自体は当時の映像もかなり見せてくれて、時代の空気を感じられるドキュメンタリーとして面白かった。そしてやっぱりクラッシュがカッコ良かったのだった。