勢いとパッションで映画を作り上げるイメージの監督が、歳を重ね経験を積む中で模索し構築していった創作理論が開陳されていて、初期衝動の塊のような初期作から徐々に作品が変容していった裏側を垣間見れたようで面白かった。
ここで語られる理論が自身の見せたいものを見せながら観客を惹きつける娯楽としての映画作りを前提にしているのが石井監督らしいが、実際には理論に無自覚だったという『突撃! 博多愚連隊』や『狂い咲きサンダーロード』などの初期作のほうがやっぱり惹きつけられるし、目が離せないというのはある。それは個人的好みや、こちらのレベルが追いついていないというのもあるだろうけど、作品作りの正解というのはやはり難しい…、というのも改めて感じた。
あとこの本、初の著作と書いてあったけど、『水の中の八月』の小説版は無かったことになったのか、岳龍の名前としては初ということか。どうでもいいことだが。