主人公・梓の一見すると非の打ちどころのない性格こそを彼女の欠損として露にして、周辺キャラクターも含めてより個々の感情の機微に焦点を当てた湿度の高さで人間関係のエグいところまで掘り下げていき、シリーズ本編よりも青春の暗部を描くということをやりながら、それでもちゃんとユーフォニアムらしく爽やかに着地させてくれて、本編とはまた別の魅力で楽しめる前後編だった。本編キャラとの絡みも辻褄あわせ的なところが大きいのだろうが、こちらの物語側から見たらこういう風景になるのかと、本編側から見た時にはただの周辺でしかなかった世界に鮮やかな輪郭を作り出していて、サイドストーリーとしても素晴らしかった。