志摩の海辺の町に父親(津田寛治)と2人で暮らす少年・透(富岡涼)は、浜で見つけた卵から生まれた亀をトトと名づけ、母親を亡くした寂しさを紛らわすように可愛がっていた。しかしトトは驚異的なスピードで成長し、空中に浮かぶ能力まで発現させる。そして同じ頃、町には突如出現した凶悪な怪獣ジーダスが迫っていた。かつて怪獣ギャオスと戦い、自らを犠牲にして町を守ったガメラと類似していることから、トトもまた戦うために消えてしまうと恐れた透は、隣家の幼馴染・麻衣(夏帆)や仲間たちとともに、トトを大人たちから隠そうと奔走するが…。監督・田崎竜太、脚本・龍居由佳里、特撮・金子功、音楽・上野洋子、怪獣造形・原口智生。
冒頭から志摩の自然風景と音楽の風情で泣けてくる。そして少年たちと津田寛治、寺島進ら俳優陣が醸し出す雰囲気が田舎の風景に自然に溶け込んでいて、怪獣抜きにしても少年の成長物語として面白い。「天然コケッコー」以前の夏帆をヒロインとして見られるのもポイント高い。
意識的に子供向けとして作られてはいるものの、怪獣描写はかなりエグくて、人を喰うジーダスはかなり怖い。おかげで逃げ回る群衆のシーンに緊迫感があり、特撮も平成ガメラを踏まえた見せ方で撮られていて、怪獣映画としても存分に楽しめた。
終盤の希望を繋いでいく子供たちというシークエンスは展開としてベタなんだけど、登場する子供たちが全員が子供らしい素朴な顔立ちと表情で映し出されていて素直に感動させられる。
最近の特撮映画が 「リアル」を導入することで失いがちなジュブナイル要素や、美少女、群衆描写、怪獣の残酷さなどが詰まった名作で、久々に観たけどやっぱり好きだし、こういう方向性の作品も怪獣映画には必要だなと改めて思った。