前作に引き続きジョス・ウェドンが監督、脚本で、スターク社長以外のそれぞれにスターとしての地位を確立している面子がちゃんと勢揃いしているのもあって期待通りに面白かった。ソー(クリス・ヘムズワース)、ハルク(マーク・ラファロ)、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、キャップ、社長、それぞれキャラクターが確立された上での痴話喧嘩、掛け合いを存分に見せてくれているだけでこちらとしては充分に楽しい。さらに今回はホークアイ(ジェレミー・レナー)の存在を前面に押し出したり新キャラであるクイックシルバーとスカーレット・ウィッチの兄妹(ゴジラ夫婦のアーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセンが演じている)を活躍させたりとメインキャスト以外の見せ場も盛り沢山で、その仕切りだけでも圧巻。アクションの見せ場としてもハルクバスター対ハルクはド派手で楽しいし、ブラック・ウィドウのバイクアクションも燃えた。
微妙なところでは新キャラのヴィジョン(ポール・ベタニー)で、これまでのマーベル映画ではアメコミ的色彩を排して一応のリアル路線で外見を作っていた感じだったのだが、ヴィジョンは出てきた瞬間ちょっと懐かしい気分になるぐらいアメコミチックで、観ているこちら側のリアリテイの線引きがグラついてしまった。それだけなら慣れれば大丈夫だが、ヴィジョンの存在自体今作ではかなり唐突で、次作以降でのキーパーソン的な役割だろうということは分かるが単体の映画としてはかなりの異物感が有り、マーベルユニバースとしての流れと単作の映画としての整合性の歪みを一身に負ってしまった感じではあった。
それとマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)がショートカットじゃないのが非常に残念だったよ。
敵のウルトロンは、次回までの繋ぎの敵役という程度の存在感ではあったが、元々ソーとかハルクみたいな化け物が相手なので、どんな悪役でもそれなりに憐れっぽくなるのは仕方ないか。
あとここからは祭りとして充分面白かったという前提で、それでも前作には到底及ばないという部分をネタバレしながら一応書いておく。
今回バラバラなヒーローがそれでも最後には団結、大活躍してスッキリという前作同様の(というか基本的にそれしかない)プロットながら、なぜ前作ほどには盛り上がらないかというと、そこへ至るまでのプロセスが酷すぎるという点に尽きる。
そもそもの元凶たるウルトロンを生み出してしまうのがトニー・スタークで、映画全体が自分で蒔いた種を自分で刈り取るという構造になってしまっていて、そこを反省しながらも汚名挽回し、ヒーローとして成長するということならまだ良いのだが、途中再び正義の為にとりあえず倫理を置いて人造人間を作り出すか否かという選択肢が提示された際に、人工知能を持つ人造人間が未来で世界を救う姿を幻視したとソーが告げるだけで、なし崩し的にまたもや同じ事を繰り返す、というのはどうしたものか。しかもそれで誕生する新キャラ・ヴィジョンはきっちり大活躍して、これだとスターク社長の勝手な振る舞いの全肯定でどうにも納得出来ない気分のままでクライマックスを迎えることになる。というかフューリー長官(サミュエル・L・ジャクソン)の「人工知能だけには手を出すな」という演説は何だったのというのもあるし。
アベンジャーズの団結も単にヴィジョンが生まれて状況が進行してしまったからとりあえず敵をやっつけに行くしか選択肢が残っていないという消極的な結果で、これではなかなか気持ちが上昇しないんだな。
まあ、これって結局マーベルユニバースとして次回はキャップと社長が戦わないといけないとか色々あって、かなり仕方がなくの流れだとは思うし、多分それもあって終盤は一致団結してこれ見よがしの人名救助劇が展開されているのではなかろうかという気もする。しかしアベンジャーズのせいで丸ごと一都市消滅してるし、多分死傷者も多数という惨状の前ではそのぐらいのボランティア活動では割りが合わないだろう。裁判受けて罪を償うレベルだよとは思ってしまった。
と、まあクライマックスに至るまでの積み上げに不満も多いし、素直にヒーローの団結に燃えられない作りで前作には到底及ばないのだが、祭りとしては楽しかったし、キメ絵が来た時の高揚感、掛け合いの楽しさといったオールスター映画ならではの醍醐味は充分満喫出来たので、やっぱりまだまだマーベル映画は観続けちゃうな、という結論だ。