世界の残酷さを生々しく描きながらも全てが詩的で美しくすぎる傑作。河をボートで渡る子供たちとそれを見守るように河岸に佇む動物たち、ハリーを乗せた列車の禍々しさ、美しくもグロテスクな芸術作品のような水中の死体など凄まじい画面の連続に圧倒される。
そんな画面の中で展開される物語も全く古びてない。偽伝道師とは言えハリーのキリスト教原理主義者的振る舞いは現代にはびこる偽預言者たちそのままだし、それに感化され一度は盲信した偽伝道師に対して、のちに社会的制裁を声高に叫ぶ市井の人々の恐ろしさは全く他人事ではない。
しかし神のように驕り平気で断罪を叫ぶ人々と対照的に、人を裁くことをせず、慎ましやかに日々を送り、しかし子供たちは命を賭して守る気概を持ち合わせたミス・クーバー(リリアン・ギッシュ)の崇高さで、僅かながらの光明も見せてくれる。
そしてロバート・ミッチャム演じるハリーのキャラクターの造り方も悪そのものでありながら強烈な魅力を放っていてとにかく凄いが、なんと言っても子供の描き方が素晴らしい。子供を子供扱いせずに一個の人間として描きながら、それでもやはり子供なんだというクライマックスの行動は何度観ても涙腺が決壊してしまう。凄い映画だ(タイトル忘れていたんだけどね)。