一介の男が政治とカネの絡んだ巨大な陰謀に巻き込まれ、翻弄されつつも一矢報いる為に立ち向かうというプロットを乾いたタッチで描くというだけで、もうそれなりに面白い。加えてマーク・ウォルバーグのハードボイルドなムードとラッセル・クロウの悪い感じが映画にマッチしていて見応えがあった。
物語は市長の贈賄容疑と、間近に迫る市長選に絡んで進行するが、悪事をやりまくっているが聴衆には受けるラッセル・クロウと、リベラルでいい人なんだが演説ではイマイチ受けない対抗馬(バリー・ペッパー)の対比の描き方も上手くて引き込まれる。
ただ主人公ビリーは常に自己の信じる正義感で動いていて、それが映画冒頭の黒人青年射殺事件から市長の陰謀へ立ち向かうという本筋まで貫かれているので、私刑を肯定するようなアメリカ的ハリウッド的な独善ぶりが非常に怖い。その部分と結局一人の力で問題が解決されてしまうという締め括りがせっかくの重厚なムードを台無しにしてしまっているのが残念か。
全体としては中盤までのリアルな陰謀劇はかなり楽しく雰囲気もあるけど、観終わると色々物足りないという、アレン・ヒューズ監督というと『フロム・ヘル』もそんな感じだったな…。