仲代達矢の過剰な熱演が凄くて、特に前半で、相棒の刑事(山本圭)と荒天の中で事件のヒントを発見するシーンでは、大仰に盛り立てる演出と二人の過剰なエモーションによってBL的な世界に突入したのかと思うぐらいの勢いだった。
しかし元々が未解決の事件で、真相の明かされることのない物語なので、劇的に展開することのない地道な捜査・取材の過程を映画として盛り上げていくにはこのぐらいの演技がちょうど良かったりするのだろうか。熱演と言えば後半出てくる隆大介が、内容的にも物語映画的展開へ加速していくこともあって印象的だった。粗暴さと気弱さが同居しているようなキャラクターにハマっていた。スコセッシの新作にも出て欲しかったなあ。
物語としては未解決事件ならではのモヤモヤ感の残る映画だが、個人的には俳優陣の過剰な熱演に加えて80年代の初頭に作られた映画ながら戦後の寒々しさとその後の変容をリアルに感じられる映像を見せてもらえただけで十分に楽しかった。