作画に関しては凄まじいクオリティで、残り2作も今作同様60分程度の尺だとしたら(さらにこのクオリティを維持しているならば)、ちゃんとまとめて一本の作品として提示していればとんでもない映画になっていたんじゃないかと思わせる気合の入った映像だった。それだけに息抜きというかメタアニメ的な効果を踏まえた上で時折繰り出される、テレビシリーズではそれなりの面白さとして機能していたデフォルメされたシーンが邪魔に感じられる箇所もあったりはしたが、圧倒的なデザインと色遣いの中で気持ち良く動いていくアニメーションならではの快感は今作以外では得難いものがあった。
しかし物語としても映画としてもあまりにもプロローグに過ぎて、ひとつの作品としては評価のしようが無い作りなのは商売上の要請かも知れないが独立した作品として失敗だと思った。物語に不要なキャラクターと社会環境が徹底的にオミットされた作りはテレビシリーズ同様だが、テレビシリーズではそれが演劇的見せ方を取り入れたように装いながら、物語を語る記号としてのアニメに特化させてノイズをキャンセルした状態で気持ち良さだけをオタクに届けるという機能性の追求に効果を発揮していたものの、ストーリー自体がほとんど動いていない今作ではデザインと雰囲気だけで構成された奇形な作品に感じられて、それはそれで面白いとは言え映画として完結したものを見せてほしかったという気分にはなってしまった。まあオタクだから次を楽しみに待ちはするんだけど。