yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

ハクソー・リッジ (2016・米、豪)

     アメリカ・ヴァージニア州で育った青年デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は第二次世界大戦が激化する中、陸軍に志願する。恋人になったばかりの看護師のドロシー(テリーサ・パーマー)を残しジャクソン基地で訓練を始めるドスだったが、銃器に触れる実習への参加を頑なに拒否する。ドスは第一次大戦の帰還兵で酒に溺れた暴力的な父親(ヒューゴ・ヴィーヴィング)のいた家庭環境で育つ中で暴力を行使しないという強い宗教的信念を持つに至っていたのだった。そんな彼を除隊させようとする上官のグローヴァー大尉(サム・ワーシントン)、ハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)たちからの圧力に屈せず衛生兵となったドスは戦地、沖縄へと向かう。しかしそこには想像を絶する地獄絵図が広がっていたのだった。

監督:メル・ギブソン、製作:ビル・メカニック、脚本:ロバート・シェンカン、アンドリュー・ナイト、撮影:ジョン・ギルバート、プロダクションデザイナー:バリー・ロビンソン、音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ。

 

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    戦場を限定しているというエクスキューズはあるが、沖縄戦を描いて大量の民間人犠牲者を語らないのはさすがにどうなんだろうとか、ヒューマニズムというより狂信的な主人公の行動原理、その行動を際立たせる為だけとは思えない人体破壊の残酷描写の数々、などメル・ギブソンはやっぱりちょっとどうかしているとも思えるんだけど、後半、戦地に赴いてから非日常の地獄状態へ突入させる手際やその混沌の極みの中で様々な戦闘シーンを明確に見せていくなど演出手腕は凄かった。意図的かどうかはともかく彼女へのプロポーズのシーンを始めとして純粋であることはわかるが同時に狂気も感じさせるように主人公を描いて、「沈黙」でも同様の若さゆえの盲信と脆さを体現していたアンドリュー・ガーフィールドにそれを演じさせてギリギリのバランスでエンターテイメントとして成立させていたのも上手かった。

 

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   映画自体は戦争を舞台にしているが、戦争そのものを掘り下げるのではなく、信念を貫いた一個人に焦点を当てていて、その姿勢が尊さと狂気を同時に見せているのが作品の本質かな、と思った。訓練中、仲間に疎まれてリンチに遭う場面でも、戦争の異常性を際立たせた「フルメタル・ジャケット」と違って、あくまで主人公の信念への試し、受難として暴力を見せているだけで、作品の興味はいかに強い信念を保持出来るか、という部分にのみあるように感じた。そもそも主人公は自身の暴力行使は禁じているが、全体が暴力による解決を向いていることに関しては特別関心を払っておらず、あくまで自分自身の行動のみが重要事項になっているのだ。だからこそ沖縄戦での彼の行動に感動的な音楽を当てて盛り上げていく演出には疑問符も浮かんできたが。

 

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    しかしかなり突飛な人物を主人公に据えて、沖縄戦という重たい題材を扱いながらそれらを軽んじることなくサクサク進むエンターテイメントに仕上げて、しかも色々気になるところはあるものの面白いのだから、メル・ギブソンはやっぱり凄いよな、というのが結論、かな。

 

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『ハクソー・リッジ』本予告編 - YouTube

 

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