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yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

神々のたそがれ (2013)

   地球より800年ほど進化が遅れている惑星に、学者30人が派遣された。地球でいうルネッサンス期を思わせる時代を迎えたこの惑星の首都アルカナルでは、しかし文化復興ではなく反動的な社会が到来し、大臣ドン・レバ(アレクサンドル・チュトゥコ)の配下、灰色隊による知識人狩りが行われていた。そんな中、地球から派遣された人間の一人は貴族ドン・ルマータ(レオニド・ヤルモルニク)として暮らしていて、人々は彼を異教神ゴランの非嫡出子と噂し、畏怖を感じていた。しかし彼自身は誰も殺すことなく観察者として事態を見守っていたが、アルカナルの混乱は彼の身辺にも及んでいき…。
    アレクセイ・ゲルマン監督作品。

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     この映画内では文字通りに誰もが世界に唾を吐き続けていて、更にこれもまた文字通りに全編糞まみれというのが凄まじい。アルカナルでは反知性主義が幅を利かせ、恐怖政治の波が押し寄せていて、人々はその状況をまさに唾棄しているが、戦いはしない。それは主人公ルマータも同じで、彼はただ状況を見守るだけだ。弾圧される残酷さの象徴として肥溜に突き落とされる知識人たちを傍観者として見続けるだけのルマータは世界に同化する為に自らに糞を塗りたくっているかのように見ることもできる。

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    そして観客であるこちら側も、当然にルマータと同じく傍観者であるのだが、アルカナルを映し出すカメラは明らかに人々に意識されていて、そのことが観ている我々自身にも観客が傍観者であることを絶えず思い出させるという効果を与えていた。

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     そして単純な物語としては、ルマータは傍観者であることを最終的には止めて、神としての力を発動する。しかしそれもまた暴力の無残な結果を生むだけで、世界の変わりようの無さ、救いの無さを象徴しているような厳しさだ。しかし世界を憂いながらもアルカナルの慣習に呑まれ、枷を付けた奴隷たちを身辺におき、貴族(ドン)として振舞っていた観察者ルマータが、最後には世界と関わり、人々と同じ場所に降りることによって、ハーモニーが生まれるというのは少しの救いとして描かれていたのかも知れない。

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   とは言っても、物語としての流れは、実はかなりどうでもよくて、実際映画内では所々で物語を補足するようにナレーションが入るのだが、それはかなり不足気味の、唐突過ぎて逆に分からなくなるような、とりあえずこれでストーリーがあることになるだろう、というぐらいに見事なまでの投げやり具合であり、ストーリーを追うのは端から諦めても構わないような作りでもある。なので、とにかく世界の構築具合とそれを描写する映像の凄さを呆然と眺めているだけで強烈な体験になるので、それでいいのではないかとも思った。

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     コスチュームもかなり独特のセンスで(衣装エカテリーナ・ シャプカイツ)、甲冑の悪魔的デザインや重量感に痺れたし、この手の作品なのに圧倒的に贅沢な物量の使い方も凄かった。あと今作ではSF的ガジェットはほとんど登場しないが、それだけに地球人の集会で一瞬だけ現れる戦闘メカ(ただの現代の戦車?)の鮮烈さ、カッコよさもたまらなかった。キャラでいえばパムパ男爵(ユーリー・アレクセービチ・ツリーロ)の太っちょで間抜けだが気のいい感じが殺伐とした世界にユーモアを与えていて良かった。

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    あとカメラが何を撮っているのか訳が分からない視点だったりするのだけど、パンフレットによると主演俳優と監督の対立で、俳優がいない間に撮影を進める為にルマータが馬で闊歩するシーンを鐙を大写しにして撮影したりしたのが原因だという嘘みたいな話が載っていた。しかしそれがまた地球外の世界観を表現してしまっていて面白い。

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   全編異常なテンションの中、手持ちカメラでぐりぐりと展開していくSF世界にアンジェイ・ズラウスキーの『シルバーグローブ』を彷彿させられもした本作、地球にしか見えない世界をナレーションで無理矢理に別の惑星の話だと言い切ってスタートする強引な異界巡りが狂気染みた映像と世界観で展開される3時間。どっぷりと異次元に浸れる、久々に凄まじいSFで、やはりロシア東欧は感性がおかしいと改めて痛感させられたのだった。


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